「最低賃金の季節」(2016年10月17日) 首都ジャカルタの2017年最低賃金決定プロセスが始まっている。労使代表・行政・学 識経験者などからなる都庁賃金評議会では、既に労使双方から希望する最低賃金案が提示 された。それによれば、労働者側は月額380万ルピア、事業者側は335.1万ルピア となっている。 規則では、翌年の最低賃金は当年11月1日に州知事が知事規則で定めることになってお り、賃金評議会で協議され合意された金額がリコメンデーションとして知事に上申され、 知事は必要に応じてそこに斟酌配慮を加えた最終決定を下すことになる。そこに歪んだ思 惑が込められることも過去に何度も起こっており、その種の思惑に油を注ごうとして労働 界が暴力デモを工業団地に仕掛けることすら頻発した時期がある。地方首長のそのような 暴走を中央政府がどうコントロールしていくのかということも、この国が抱える不安定要 素のひとつに数えることができるにちがいない。 事業者側代表の核になっているのは全国商工会議所内の労使問題対策機関であるアピンド (インドネシア事業者協会)で、アピンド首都支部は提案金額について、2015年政令 第78号に定められたアップ率8.11%に従って算出したと説明した。政令として定め られたそのアップ率は労使双方の希望を踏まえて定められたものであり、労働者側にとっ ても妥当性のあるものと考えて差し支えないはずだ、と強調している。しかしアピンドは 年々の最低賃金決定について、その地域の経済成長率とインフレ率をベースにした公式を 用いて算出されるのが最善である、とも理想を述べている。 そうなることによって、労働者も経済の成長が自分の所得を増加させるという因果関係を 理性的に受け入れることができるわけで、確実性あるいは確定感はこれまでよりはるかに 高いものになるとのこと。 一方労働者側は、2003年法律第13号労働法が定めている適正生活需要(KHL)に 準拠して最低賃金が定められるのがあるべき姿であるとして、既に在来パサルとモダンマ ーケット2ヵ所で物価サーベイを行い、更にジャカルタの経済成長率とインフレ率を加味 して2017年の最低賃金を算出した、と380万ルピアの根拠を説明した。 11月1日の都知事規則確定を目指して都庁賃金評議会での協議は更に続けられることに なる。一方、ジャカルタ労働者運動総裁はしばらく前に、ブカシとカラワンの最低賃金は 現在のジャカルタ最低賃金より30万ルピア高い340万ルピアになるだろう、と語った。 去る9月に在来パサル7ヵ所とモダンマーケット2ヵ所で行ったKHL物価サーベイ結果 が340万ルピアに達したのがその根拠。ただしKHL物価サーベイ対象物品には、教育 ・保健・情報通信などの項目が加えられている。