「新ルピア通貨発行(前)」(2017年01月06日)

政府は2016年12月19日に新ルピア貨幣を発行したと公表した。今回の発行は通貨
に関する2011年法律第7号に定められた内容に即した貨幣を国民の手に持たせること
が主眼となっており、そのため紙幣と硬貨の全金種に渡って新貨幣が発行された。

2011年通貨法では、従来中銀が発行する形式になっていた貨幣をインドネシア共和国
政府が発行する形に変更することや、国内での取引決済にはいくつかの特例を除いてルピ
アの使用が義務付けられるといった重要な国家方針が定められている。

インドネシアでは従来から、新貨幣が発行されると現行貨幣は流通禁止ステータスに入り、
移行期として市中銀行から中銀への回収が5年間続けられ、5年が経過すると市中銀行は
取扱をやめる。しかし国民の手元に残った流通禁止貨幣は更に5年間、全国の中銀支店で
新貨幣との交換の機会がまだ残されており、その間所有者は個人で中銀支店へ出向いて新
貨幣に交換してもらうことができる。

その10年間という移行期を過ぎれば、価値のないただの紙切れと化してしまうわけだ。
市中での流通価値という面から見るなら、一般市中銀行が取扱をやめるまでの5年間しか、
インドネシア国内で支払いツールとして使うことはできないだろう。

さて、今回発行された11種の新貨幣はどうかと言えば、旧貨幣はまだ流通禁止ステータ
スに置かれていないため、法的にも当面二種類の貨幣が共存することになる。これは従来、
辺境/国境地域でルピア貨幣が十分に行き渡っておらず、国境の向こうの国の通貨が半ば
公然と使われていた事実があり、その状況を11年通貨法に沿って改善するために辺境/
国境地域へのルピア貨幣の供給を潤沢におこなわなければならないというお家の事情が存
在しているためだ。つまり、国内流通通貨量を増やさなければならないことから、この変
化に応じた総需要の見通しがつくまで、中銀は旧貨幣を流通禁止ステータスにしたくない、
ということであるにちがいない。

今回の新貨幣発行は通貨法の実践が主目的になっている。一方、中銀と政府が何年も前か
ら計画して来たデノミネーションもまだ反故にされたわけでは決してない。デノミ法案は
国会審議段階に入っているものの、他の重要法案の陰に隠れてしまい、進展が捗らないと
いうのが舞台裏の事情であり、法的プロセスが踏まれていけば既に天文学的桁数に入って
いるルピア通貨のデノミが実現することになる。

中銀は次の通貨発行がこのデノミ法の実践のためのものになるだろうと見ており、それが
早くなるか遅くなるかは法的プロセスの決着次第と考えているようだ。[ 続く ]