「疑似科学」(2017年01月26日)

ライター: コンパス紙記者、アフマッ・アリフ
ソース: 2016年12月28日付けコンパス紙 "Pseudosains"

読書園活動家のわたしの友人が西ジャワ州スカブミの田舎にあるチャリギン村に本を寄贈
する計画を伝えに行こうとして、愕然とした。地元宗教界有力者が地学関連の学問を教え
ることを禁止している、という村の小学校教員のブログを読んで、かれは予定していた自
然科学関連の書物をリストから外すことにした。

「宗教の教えに反するから、地球の形や動きを教えないように、と村のその有力長老はわ
たしに依頼した。」その村の教員ムリヤディさんはブログにそう書いている。
宗教の教えでは、地球の表面は平面であり、太陽が東から西に移動するのだから、どうし
ても自然科学を、中でも太陽系に関することを教えるなら、あんたは背教者と見なされる、
とムリヤディさんは言われたそうだ。


ムリヤディさんの人物像をわたしはソーシャルメディアで調べた。かれがその出来事を体
験したのは、5年前にチャリギン国立小学校教員として赴任したときだった。当時チャリ
ギン村はたいへん辺鄙な地で、住民は閉鎖的であり、テレビもラジオもなかった。長老が
村の暮らしの鍵を握る人物になっている。

チャリギン小学校在職中に、ムリヤディさんは村の長老を話合いのために学校へ招いた。
アルクルアンの章句を朗誦するビデオを見せた後、宇宙から見た地球のビデオや写真を示
した。何回かそういう話合いが行われた結果、それまで小学校へ行くのを禁じていた自分
の息子ふたりを長老は小学校に入れてムリヤディさんの生徒にした。情報公開と対話がそ
の変化を生んだのだ。

3年前にムリヤディさんはチャリギン小学校を去って南スカブミの別の小学校に奉職した。
かれが去るころには村内に変化が広がり始め、住民はより開放的で自信を持つようになっ
た。

<インターネットパラドックス>
情報公開が知識の進歩を保証するものではない。インターネットを介して世界が一層緊密
度を増しているいま、地球が平面であるという太古の観念が復活してきている。

1956年に誕生したフラットアースソサエティは2004年以来、多くのブログやバー
チャル討論会を通して信奉者を集めている。イギリス人サミュエル・シェントンが作った
この集団は、地球の形がディスケット状のもので北極と南極は氷に包まれた最辺縁部にあ
ると信じている。

キリスト教原理主義者のアメリカ人チャールズ K ジョンソンがシェントンの運動を引
き継ぎ、宇宙から見た地球の絵が球形であるのはシステマチックな虚偽だと主張した。ジ
ョンソンによれば、アポロ11号の月面着陸ニュースは陰謀であり、1986年に起こっ
たチャレンジャー号の墜落は神からの制裁であるとのこと。

インドネシアでは、インドネシアフラットアースソサエティがフェイスブックに登場し、
別のグループも地球が平面であると主張するユーチューブ動画を出していて、宗教的な解
釈がまぶされている。


宗教と科学のコンフリクトは古くからの問題だ。地球が太陽の周りを回転しているという
地動説を支持した科学者ガリレオ・ガリレイはその見解のゆえにローマ法王庁に投獄され
た。その理論は西洋でコペルニクスが発展させたもので、ガリレオの死から350年後に
なって、カソリック教会はやっと科学コンセプトの前に誤りを認めることになる。それ以
来、地球は球体で太陽を周回しているという理解が確立されている。

著作Pseudoscience:A Critical Encyclopedia(2009年)の中でブライアン・リーガ
ルは、フラットアースコンセプトを疑似科学に位置付けた。あたかも科学的に見えるが、
科学の原則にそぐわないものということだ。たとえば、アメリカで大学を出た教授がディ
マス・カンジェン・タアッ・プリバディの重力理論・量子物理学・トランスデイメンショ
ン理論などによる紙幣複製能力を信じるというようなものだ。

疑似科学はまた、気候変動はアメリカ産業の競争力を失わせようとして中国がでっちあげ
たホウクス(hoax)だというドナルド・トランプの声明にも見ることができる。かれは気候
変動に関する数千件の学術記事を否定したが、ふたを開けたらアメリカ合衆国大統領にな
ってしまった。

学問に縁遠い人間から、情報まみれになっている者に至るまで、だれでも疑似科学に呑み
込まれ得るのである。