「レープは普通で当たり前のこと(1)」(2017年02月01日)

女性に対する性暴力犯罪の処理と処置が世の中の期待から大幅に低いことをインドネシア
大学法学部裁判監視ソサエティが明らかにした。全国2,040人から集められた回答で
は、1〜6段階のインデックスで次のような結果が見られた。1.0ポイントが最高の満
足度を示している。中央値を3.0ポイントとするなら、国民はすべての面で不満足であ
るということのようだ。

警察の事件取扱い 3.5ポイント
検察の求刑 3.4ポイント
被害者の保護と権利保持 3.6ポイント
判事の判決 3.4ポイント
現行法規 3.6ポイント
犯人への刑罰期間 3.3ポイント

更に、被害者の状態に対する判決の重さという面を調べたところ、次のような結果が得ら
れた。こちらは1〜3段階のインデックス表示になっており、インデックス数値が高いほ
ど刑罰が重くなる傾向を示している。

年令18歳以上(成人)2.7ポイント
慢性病・障害があって抵抗力に欠如 2.7ポイント
既婚者 2.6ポイント
未婚の成人(処女) 2.7ポイント
非処女の成人 2.6ポイント

警察や検察はジェンダー差別的な法規を機械的に執行しているだけであり、しかも担当官
本人までもが往々にして女性差別的な姿勢を示すといった現象が見られることが、被害者
に正当な取り扱いを感じさせない原因になっている。


性暴力の中でレイプ事件は立件が困難なために最初から官憲の捜査に熱が入りにくいとい
う要素がある。被害者の性器からスペルマが検出されることが立件条件のひとつになって
いて、被害者の立場からすれば、すぐに自分の身体を清めたいという欲求が生じることと
その条件は衝突する。次いで、ふたり以上の証人が必要とされるという立件条件があり、
他人の目がある所でレイプはまず起こらないから、これも女性の側に困難をもたらしてい
る。

そういう困難な条件下に官憲が事件解決のための捜査を行うには、捜査員のジェンダー平
等観念や被害者への同情心が大きな駆動力となる。別種の犯罪事件なら、証拠品発見と事
件目撃証人の獲得が犯人逮捕に次いで重要な職務になっているが、女性への性暴力事件で
は根本的な発想の転換を求められる。加えて裁判では、医師の検診報告だけでなく、心理
学者の評価も必要になる。


ミソジニーを踏まえた女性の性欲に対する否定と犯罪化の傾向はイスラム社会を構成する
ひとつの柱となっており、往々にして官憲側の目からは、自分の性欲充足を求めて男を挑
発/誘惑し、快楽を得てから男を犯罪者に仕立てて自分を潔白に見せようとする性悪女の
手管という偏見がこぼれ出る。このロジックが、レイプ被害者を悪者にするイスラム社会
のひとつの顔となっている。

それが社会生活におけるひとつの価値体系の基盤に置かれているため、法廷でもそのロジ
ックによる被害者への尋問が発生し、被害者を二度目の被害者に追い込む環境を下支えし
ているのである。

その中に被害者が処女であったかどうかがひとつのポイントを形成することは容易に見て
取れるにちがいない。イスラム社会の常識では、性悪女になりうるのはセックスの快楽を
既に体得した者に限られる。処女はその要素に欠けているため純「客観的」に被害者にな
りうるが、非処女の場合はその確信が持てない。[ 続く ]