「レープは普通で当たり前のこと(終)」(2017年02月03日)

コンパス紙R&Dが2016年11月26〜27日に17歳以上の全国14都市住民43
2人から集めた統計も、裁判監視ソサエティの報告と類似の結果を示している。

質問1.性暴力事件を封じ込むための法執行者の業績は満足できますか?
回答1.不満 55.8%、満足 33.6%、不明無回答 10.6%
質問2.性暴力加害者に対する判決は満足できますか?
回答2.不満 62.0%、満足 24.1%、不明無回答 13.9%
質問3.性暴力分野に対する政府の政策に賛成しますか?
回答3.賛成67.4%、反対 23.4%、不明無回答 9.2%

質問3.の政府の政策というのは、2016年法律代用政令第1号で既存法規にあるもの
に加重する刑罰を定めたことを指しており、必要に応じて加害者に去勢処置を施せるよう
にしたことから、去勢法という別称が与えられている。

法律代用政令というのは、法律の制定プロセスがたいへん長い期間を必要としているため、
緊急に法規を定めて対応するべき状況が出現したとき、法律を定める前に法執行の手が打
てるようにするべく法環境を調えるのを目的にして考え出されたツールだ。もちろん法律
代用政令を政府が定めるためには、国会の承認が必要とされる。そして、それが制定施行
されたなら、次に国会は正規のプロセスを踏んでその内容を法律にするという流れになっ
ている。


2016年5月に制定された法律代用政令第1号の法律化への動きはどうなっているのだ
ろうか?実は、法律代用政令の審議の際にも国会では賛否両論に別れたのだが、当時続発
した少女に対するレープ殺人事件が大きな社会問題として国民の怒りを招いたため、その
風潮に押されて国会は法律代用政令第1号の承認に回った。ところが、それで一旦立法側
の対応が終わったあと、国会内部ではあらためてその賛否両論に関する諸会派の対立がぶ
り返された。

問題の焦点は、去勢やチップの体内埋め込みといった加害者への対応が基本的人権違犯に
触れる・触れないという見解の相違であり、その点の議論を煮詰める必要があるため、も
っと時間をかけたいという国会の表明によって現在去勢法の法律化は延期されている。

国会の法律制定プロセスというのは、毎年法制計画表が作られて、そのリストに挙げられ
た法案の審議が行われる形を執る。延期というのは法制計画表から外されたことを意味し
ており、翌年度の計画表に入れるという予定にはなっているのだが、つまりは、それまで
棚上げということだ。

国民自体は上記コンパス紙調査の質問3.に見られる通り、三人にふたりがその法律代用
政令に賛成している。ところが法曹界、中でも裁判所は即座に法律代用政令に従うように
なったわけでもなく、法律と政令の重みは歴然たる差があるため、その実質部分に顕著な
変化が出現しないかぎり、国民はフラストレーションに包まれ続けることになるだろう。

法律代用政令が施行されてから既に半年が経過しているものの、法廷では旧態然たる対応
が続けられているばかりのようだ。法律化が一日も早く成し遂げられ、新しい法律に従っ
た判例がどんどん作られない限り、政府の政策が法廷で実践されることは起こらないかも
しれない。国民が大賛成している2016年法律代用政令第1号が、もちろん意図したわ
けではあるまいが、その時期発生した国民の怒りを鎮めるための単なるおまじないでしか
なかったということになるなら、インドネシアのレイプが「普通で当たり前のこと」から
抜け出す日はいつまでたってもやってこないかもしれない。[ 完 ]