「インドネシアの治安は良いか悪いか?(後)」(2017年02月03日)

ちなみに、全国各州警察管区におけるクライムクロック2015年データによれば、犯罪
多発州のトップ5は次の通り。
1.首都警察 11分49秒
2.東ジャワ州警察 14分49秒
3.北スマトラ州警察 14分54秒
4.西ジャワ州警察 18分54秒
5.南スマトラ州 25分32秒

一方、ボトム5は次のようになっている。
1.北マルク州警察 10時間45分42秒
2.西パプア州警察 6時間27分36秒
3.マルク州警察 4時間45分11秒
4.バンカブリトゥン州警察 4時間40分19秒
5.中部カリマンタン州警察 3時間16分2秒

ただし、この種のデータは総人口、流通通貨量、そして文化内の諸価値観などを総合して
検討しなければならないから、クライムクロックの時間が長いから犯罪が少なく、安全で
治安が良いなどという結論を即席で引くわけにいかない。

そもそも、個人所有観念が現代文明社会と異なっている土地で暮らそうとすると、周りで
暮らしている地元民にありとあらゆるこまごまとした品物を勝手に持っていかれて当惑す
るという現象に直面することになる。それはわたし自身がインドネシアで暮らし始めたと
きに体験したことだ。

引越しして隣近所に自己紹介のためオープンハウスを行い、食事を用意して自前の食器を
並べた。スプーン・フォーク・ナイフの三点セットをそろえて使ってもらい、かなり疲労
してその日を終えた。

数日後、台所の抽斗を開けたら、なんとナイフがほとんど見当たらない。スプーンとフォ
ークの三点セットにできる組み合わせはほんのわずかになっていた。つまり客人たちはナ
イフだけを主人の許しも得ずに持って帰ったということだ。

現代文明社会でそれは泥棒行為なのだが、そんなことのために警察に訴えるのか、という
ことになる。そういう犯罪にカウントされない泥棒行為は、北マルクや西パプアではきっ
とありふれたものだろうとわたしは推測するのである。


コンパス紙R&Dが2017年1月11〜13日に全国14都市の17歳以上の住民56
7人から集めた統計では、詐欺・窃盗・強盗・強奪などの犯罪の被害者にならないための
保安責任が本人にあると考えているひとは3人にひとりしかいなかった。

質問1.個人とその家族を犯罪の被害から守る保安責任は誰にありますか?
回答1.本人33.3%、周辺環境6.3%、保安機構10.4%、全関係者49.9%
年代別には次の通り
25歳以下 本人26.6%、周辺環境0%、保安機構12.5%、全関係者60.9%
26〜35歳 本人28.4%、周辺環境7.5%、保安機構8.2%、全関係者56.
0%
36〜45歳 本人36.2%、周辺環境7.3%、保安機構7.3%、全関係者49.
2%
46〜55歳 本人39.5%、周辺環境5.9%、保安機構8.4%、全関係者46.
2%
56歳以上 本人31.5%、周辺環境8.2%、保安機構23.3%、全関係者37.
0%

質問2.過去三ヵ月にあなたもしくはあなたの家族が犯罪の被害者になりましたか?
回答2.イエス41.3%、ノー58.7%
性別には次の通り
女性 イエス39.3%、ノー60.7%
男性 イエス43.1%、ノー56.9%

警察からの被害を怖れて、すべての犯罪被害者が警察に届け出ているわけでないというイ
ンドネシア特有の現象をわれわれは忘れてならないだろう。[ 完 ]