「人間性が犯罪予防の弱点(後)」(2017年02月07日)

事件発生の連絡でブカシ市警が捜査を開始する。集まった情報の中に、被害者を鎌で斬り
つけた四人組強盗団のひとりは奇妙な鎌の握り方をしており、しかも威嚇なしにいきなり
斬りつけ、数回斬ったがいずれも浅い傷で終わっているというものがあり、その特徴的な
手口から警察は犯人がブルクあるいはブルグッと呼ばれる男の率いる強盗団ではないかと
見当をつけて、ブルクの捜索に集中した。

ブルクは右手の小指をなくしており、刃物をしっかりと握って相手をたたっ切るのが難し
く、普通人ほど力が入らないために被害者が生命を落とすことが稀だ。


首都警察一般犯罪捜査局機動部隊捜査班はブルクの足取りを追い、1月9日にスラバヤで
逮捕した。ブルクをジャカルタに連れ帰ってから、犯罪の証拠品となる犯行に使われた鎌
を手に入れるために隠し場所に案内させたところ、ブルクが逃げようとして捜査員を襲っ
たため、かれは鉛玉を二発撃ちこまれて絶命した。

ブルクの手下のうちふたりは北ジャカルタ市ラゴア地区で逮捕されたが、もうふたりは逃
走しており、警察が追跡中。


ブルクの一味はガソリンスタンドの売上金を専門に狙う強盗団で、警察が把握している限
りではジャティワルナ地区の前に北ジャカルタ市パンタイインダカプック地区とブカシ市
ジャティアシ地区で二度犯行を重ねている。

この一味はブルクを含めて5人のメンバーから成っており、犯行実行チームは4人で2台
のオートバイに分乗して売上金を銀行に運ぶガソリンスタンド従業員を襲撃する。もうひ
とりはガソリンスタンドの内情を探る一種の諜報員で、その役割はtukang gambarという
隠語で呼ばれている。日本語に訳すなら「作図屋」とでも言うべきか?

作図屋は普通の市民のふりをしたり、あるいは二輪オジェッ運転手のふりをしてターゲッ
トにしたガソリンスタンドにアプローチし、そのスタンドの従業員と親し気に世間話をし
ながら売上金を銀行に納める業務の様子を聞き出す。そして、聞き出した内容が実態と一
致しているかどうかを、離れた場所から観察する。普通、作図屋は二回ターゲットのガソ
リンスタンドへ行くだけで仕事が終わる。最後は決行日に従業員が間違いなく出発したこ
とを実行チームに連絡して、その任務を終える。実行チームはその従業員がいつも通る銀
行へのルートの途中で待ち伏せし、犯行に及ぶという手順だ。

ほとんど毎日大金を運ぶ業務を行う者は、その仕事の時間や通行ルートをころころと変え
ることで犯罪の被害を免れる可能性が大きく高まる。この鉄則がインドネシアで黄金どこ
ろかダイアモンドの価値を持っているというのは、間違いないところだろう。[ 完 ]