「少女妻はまだたくさん」(2017年02月07日)

インドネシアの未成年結婚問題は、現行の1974年法律第1号「婚姻法」における女子
の婚姻適格年令16歳、男子19歳という規定が早婚を煽っているとして憲法裁判所に違
憲提訴されたが、憲法裁判所は婚姻法を改定するよう促してその提訴を却下した。

国会は婚姻法改定を国家立法プログラム内に載せて2019年までに法律化する計画だが、
今のところはもっと緊急な法案審議にかまけて本格着手されていないのが実情のようだ。
一方、その状況を踏まえてNGOは全国地方部へのネットワークを経由し、各地方におけ
る民意の向上と地方政府への働きかけを強化して、住民の初婚年齢を引き上げる政策を強
めさせるよう努めている。


初婚年齢の低さは未成熟な少女の妊娠・出産と子供の養育という国民福祉に対する逆行現
象を生む。インドネシアの出産時母体死亡10万件中249というハイリスクを温存させ
ている環境を育んでいる要因のひとつがそれだ。また精神的に熟していない未成年の夫か
らの家庭内暴力、経済力不足、家庭維持への無責任さ、更には夫が出稼ぎに出て家庭を捨
て去り家庭崩壊に至って離婚するといった破滅的結末例の多さは諸方面から報告されてい
るし、そのようにして引き起こされる住民の貧困や義務教育ドロップアウトが地元社会の
発展に対するブレーキになっていることを地方政府に認識させて地元政策に反映させるの
がNGOの戦略になっている。

それに応じて敏感に条例や州知事規則を設けて対応を進めている地方もあれば、ほとんど
何の改善も見られない地方もある。これまでのところは敏感な州の方が少数派だ。


西ヌサトゥンガラ州は州知事回状第150/1138/Kum号を出して州民の婚姻適格
年令を21歳とするよう州民ならびに州内行政機構への呼びかけを行った。回状というの
は行政最高権者が出す通達でしかなく、そのために執行義務もなければ、不服従への罰則
もない。だが州内でその呼びかけは、効果が出ているとのこと。

住民のほとんどがムスリムである西ヌサトゥンガラ州で婚姻のほとんどは宗教省管下のK
UA(宗教役所)が管掌する。州KUAには宗教省結婚離婚助言庁を介して国家住民管理
家族計画庁から2015年2月に婚姻適格年令を21歳に引き上げるよう要請が出されて
おり、KUAは住民の婚姻申請がそれにそぐわないとき、婚姻を遅らせるよう説得に努め
ている。

しかし、州知事の決め事は法律の内容の下位にあるため、法的にそれを強制することはで
きず、住民が「どうしても」と言い張れば、それを拒む手段はない。


ヨグヤカルタ特別州では、規範的な形式に進むよりも実質的な知識と理解を若者たち、特
に女子生徒に持たせることを重視して、その実践が励行されている。

学校を拠点にして、小学校から高校まで生徒に生殖に関する保健衛生教育を与えることが
内のグヌンキドゥル県やクロンプロゴ県で実施されるようになり、婚姻適格年令の引き
上げも規則が定められた。州住民管理家族計画庁はNGOと協力して州内の助産婦に対す
る広報活動への参加を要請し、助産婦から未成年女子に対して望まれない妊娠を防ぐため
にどうするべきかという知識伝授が進められている。ヨグヤカルタ特別州の2015年未
成年女子出産件数は1,078件あったが、2016年は11月までで720件に低下し
ている。
「未成年で妊娠した少女は恥をさらさないよう親が結婚を強いる傾向が強い。しかし無理
強いされたセックスで妊娠した少女が、そんなことをした少年と家庭を持つことで、もっ
と多種の暴力にさらされる危険に満ちた環境に少女は身を置くことになる。」ヨグヤカル
タ宗教裁判所の記録では、2016年に256件の未成年結婚があった。


西ジャワ州でも、ラトガース、プランインターナショナル、独立青少年同盟などのNGO
が2016年1月から4年間、未成年結婚の減少を目的にして活動を推進することを決議
した。