「プカロガン旅行記(前)」(2017年02月16日)

インドネシア最大のバティック生産地は中部ジャワ州プカロガン(Pekalongan)市だ。決し
てヨグヤカルタやソロではない。ヨグヤカルタやソロで売られている廉価品バティック布
の多くは、プカロガンから供給されている。

プカロガンの基語であるkalongとは果実を食べる大型のコウモリを意味している。ジャカ
ルタからジャワ島北岸街道を東進してプカロガンの町に入る橋の真ん中には、それにちな
んでコウモリをかたどった巨大な塔が立っている。

中部ジャワ州でスマラン目指して北岸街道を走ると、このプカロガンの町は街道沿いにた
くさんのホテルが目に付くから、チレボン〜スマラン間では旅行客の多い町であるにちが
いない。その旅行客たちはきっとバティックの買い付けと無縁でないだろう。

もちろん、ジャカルタあるいはスマランから鉄道でプカロガンの町を訪れることもできる。
2017年1月のある日、コンパス紙記者がプカロガンに旅した。今はジャカルタから姿
を消したベチャを楽しもうとして、かれはプカロガンを訪れたのだ。その旅行記をご紹介
しよう。


午前11時43分:ジャカルタを午前7時に出た列車がプカロガン駅に着いた。駅前には
ベチャ引き(アバンベチャ)が大勢、客を待っている。プカロガン駅ベチャ組合所属のア
バンベチャはおよそ50人。一日チャーターで町中を案内してくれる観光パッケージの料
金は10〜20万ルピア。通常ルートはバティック製造工房と売場を数ヵ所訪れ、プカロ
ガンバティック博物館を回り、プカロガンのローカル料理を食べに案内してくれる。nasi 
megono, soto tauto, sego berkat, garang asemなどがプカロガン名物として有名な料理
だ。そして、町中からおよそ4.5キロ離れたPasir Kencanaビーチへも連れて行ってく
れる。

記者はそのベチャのひとつに乗った。プカロガンのベチャは他の町のベチャより幅が狭い。
普通の体形の大人が二人乗れば、もういっぱいだ。アバンベチャが着ているTシャツには、
かれの名前が書かれている。何か忘れ物をしたり、あるいはそのアバンベチャを探す場合、
名前を記憶しやすいから、これは便利だ。おまけに自分の名前を公表しているのだから、
社会的に指弾されるようなことはしにくい。

記者はまず、食事処に連れて行ってもらう。ソトタウトを頼んだ記者をアバンベチャはこ
の町有数の旨い店、市内クレゴ町トゥラタイ通りガン5にあるワルン「ソトクナウィ」に
案内してくれた。庶民が行く店だから、値段も手ごろ。

記者はそこで水牛肉のタウトを注文。水牛の肉は筋張っているから、店ではそれを4時間
煮込む。そして柔らかくしてからソトのスープに漬けて煮る。来店客に煮込んだものをど
んどん出してくるから、ほとんど待つ間もない。記者はアバンベチャを誘って一緒に食事
する。それがインドネシア文化だ。[ 続く ]