「パンチャシラよ、永遠なれ(1)」(2017年02月27日)

国家イデオロギー「パンチャシラ」の存在に横車を押し、あるいはその内容をいじくろう
とする集団の動きが顕著になりつつあるいま、そのようなグループが何者であろうと、政
府は厳格な措置を行って国家の存立基盤を護持するように努めなければならない、と諸政
党が政府の手ぬるい対応を批判した。


国会第一党であるPDI−P党事務局長は、国家生活と国民生活の根底を支えている国家
原理は議論の余地を持たない最終決定である、と党の姿勢を強調した。「過日、党首が行
ったスピーチの中で、インドネシア国民のマジョリティはサイレントマジョリティになっ
ているとの警告がなされた。昨今、インドネシア国民の一体感や相互理解のための寛容性
を破壊し、国民を離反・反目させてインドネシア統一国家を崩壊に導こうとする企みが激
化している。わが党はパンチャシラ国家の護持をコミットしているのであり、そのために
マジョリティ国民がサイレントの状態を脱け出してインドネシア統一国家を守るために侵
略者に反対する声を高めて行くべく、党活動の焦点のひとつに位置付けた。」

ゴルカル党とナスデム党も、全国民が一丸となってビンネカトゥンガルイカとパンチャシ
ラの国是を護持しよう、と国民に呼びかけた。その二党党首の会談で双方は、パンチャシ
ラに横車を押そうとする者は誰であれ、強硬な態度でそれに臨み、厳しい措置を採ること
を掛け値なしに実行するよう、政府に申し入れを行うことで合意した。「パンチャシラ・
統一・団結・強固たるインドネシア統一国家は妥協を許さない国家イデオロギーだ。われ
われは昨今、国民の声を国会に上げて政治に反映させようとするデモクラシー方式よりも、
街頭に多数の人間を集めて威勢を顕示しようとすることを選択するプレッシャーグループ
の台頭に直面している。そのような動きは断乎として排除し、建国以来の伝統を誇るデモ
クラシーを守って行かなければならない。」ナスデム党党首はそうコメントしている。


パンチャシラとは、約束したインドネシア独立の準備のために日本軍政期末に作られた独
立準備調査会の中で、民族指導層が発案したいくつかの国家原理が最終的にまとめられた
ものであり、指導層の頂点にいたスカルノが1945年6月1日に表明したものが最終ベ
ースとなって調査会に諮られ、それが練り上げられたものが現在のパンチャシラになって
いる。決してスカルノひとりがすべてを決めたわけではない。

まず5項目の国家原理が定められ、その内容に即して憲法が作られた。国家原理を逐語的
観念的にしか理解できないひとびとにとっての国家の基本は憲法にあることになるのだが、
より柔軟なひとびとにとっての国家構造のベースはパンチャシラなのであり、かれらにと
っての憲法は副次的なものととらえられるにちがいない。そこの使い分けはケースバイケ
ースだろうが、そのことがどういう帰結をもたらしてくるのかについて、わたしにはまだ
先がよく見えていない。[ 続く ]