「パンチャシラよ、永遠なれ(終)」(2017年03月07日) さて、サラフディン氏の論説に戻るとしよう。 インドネシアの一体性を損ない、分裂させようと挑んでくる、PRRI、プルメスタ、D I/TII、PKI、そしてGAMからOPMに至るまで数多くのできごとをわれわれは 経験している。オルバレジームはインドネシアの一体性を維持するために治安型アプロー チをメインにしたため、人権違犯がたくさん発生した。 ポストオルバ期に出現した分離主義グループは、部分的に市民や警察を標的にしてテロリ ズム戦略を用いるイスラムグループだ。かれらはイスラム教義やインドネシアの歴史を正 しく理解していないムスリムたちなのだ。 他のイスラムグループは、イスラム教国家やカリフ制国家の実現を勝ち取ろうとする者た ちで、かれらは独立宣言の理想を達成することにパンチャシラは失敗したと考えており、 その誤った理解に国立イスラム教大学以外の国立大学教官たちを含めて大勢が共鳴してい る。 (4)Kerakyatan Yang Dipimpin oleh Hikmat Kebijaksanaan, Dalam Permusyawaratan / Perwakilan (英知に導かれる合議制と代議制方式の人民主権) このタイトルは理想であり、現実にはしばしば悪用されている。ブンカルノは国会を解散 してDPR-GR(ゴトンロヨン国会)とMPRS(暫定国民協議会)を作って自分が選んだ議員を 送り込んだ。大政翼賛議会だ。スハルト時代は軍会派とFKP(公共諮問フォーラム)を通 して議会が牛耳られた。 現在われわれが行っているデモクラシーは、代議制の中で英知に導かれた合議制になって いないようにわたしには思われる。われわれのデモクラシーの現状は、政党党首選挙から 州・県本部の長に至るまで資金力が結果を出している。 大統領や地方首長選挙における直接選挙制度はわれわれの政治生活にたくさんの問題を持 ち込んでおり、多数のひとびとはそのシステムがこのパンチャシラ第4項目に合致してい ないことを感じている。そうではあっても、現在のシステムは大変優れた業績を出す地方 首長たちを輩出させている。大統領直接選挙からは、そのように顕著な業績を出す大統領 がまだ出ていないものの、決して劣悪な大統領というわけでもない。 (5)Keadilan Sosial bagi seluruh Rakyat Indonesia (全インドネシア国民に対す る社会的公正) 社会公正は最後に置かれているが、これは他の4項目の基盤を支えるたいへん重要なもの である。にもかかわらず、この項目はこれまであまり重視されなかった。2000年のジ ニレーシオは30台だったというのに、今やそれは41にまでアップしている。中央統計 庁が使っている国民貧困者数統計基準は世銀のものと異なっている。世銀の基準を使えば、 わが国の貧困者は50%に近付いていくのだ。政府が言う12%などではない。 きわめて多数のインドネシア国民が陥っている貧困は、構造的なものだと言われている。 国の政策の方向性が誤っているために起こっているとして、スリトゥア・アリフとアデイ ・サソノが1980年代に使った術語だ。あれから30年経過したというのに、その現象 はいまだに続いている。 われわれの経済政策は、経済上の公正さを実現させる国家政策の形で構造的転換が必要と されている。2007年から土地改革プログラムが叫ばれているにもかかわらず、何ひと つ変化は起こっていない。 総括としてサラフディン氏は、パンチャシラの各項目に関する現状の評価を行った。 筆頭項目:かなり良い 第2項目:国民医療サービスが良くなっているが、欠点の改善へのハードワークを忘れて はならない。 第3項目:数十年前に悪化したことがあるが、十分改善されてきている。 第4項目:まだまだ良いとは言えない。 第5項目:全体の中でもっとも劣っている。 これではインドネシアを、まだパンチャシラ国家とは言えないのだ、とサラフディン氏は 批判しているのである。[ 完 ]