「外国語の契約書は無効(前)」(2017年03月13日)

ライター: パジャジャラン大学法学部教授、フアラ・アドルフ
ソース: 2017年2月22日付けコンパス紙 "Perjanjian Batal karena Bahasa"

言語はコミュニケーションのためのファシリティだ。そしてまた、意志や意見を表明し、
他人と議論を交わすためのファシリティでもある。だから社会生活において、言語は重要
な役割を担っているのである。

ところが、言語が契約書という法的なものと関りを持たされたとき、災厄が生れる。災厄
が出現するのは、外国人との契約締結において文書にインドネシア語が使われなければそ
の契約が無効になる、とこの国が定めているからだ。昨年西ジャカルタ地裁が下したイン
ドネシア側事業者と外国人事業者間の係争に対する判決の論旨はそうなっていた。


その両事業者は英語で作られた契約書の内容に則して協力していた。ところがその実践の
中で協力活動が係争に発展した。インドネシア側はその外国語の契約書の内容に関する正
当性を問うために、西ジャカルタ地裁に訴えを起こした。そして驚くべき判決が下ったの
だ。地裁は法律違反であることを理由にして、その契約書が無効であると裁断したのであ
る。

地裁が法的根拠にしたのは国旗・国語・国章・国歌に関する2009年法律第24号通称
「国語法」で、その第31条はインドネシアの国家機関・政府役所・民間機関・国民個人
が関わる契約書はインドネシア語が使われなければならないと定めている。

高裁の判決も、601/K/PDT/2015と採番された最高裁判決も、一審判決を支持した。その判
例に追従して、外国語で作られた取引契約書の無効を求める告訴が中央ジャカルタ地裁に
既に2件出ていることを法曹界高官のひとりが明らかにしている。この風潮が全国の地裁
に拡大して行くことは大いに懸念されており、それが現実のものになれば、インドネシア
における法とビジネスに不確定性の大打撃がもたらされるおそれが強い。

国語法第31条の規定は議論を招くものだ。外国語で作られた契約書の合法性に関する裁
判所の判決は、外国人事業投資家を含む実業界に不安の渦をかき混ぜている。契約書にイ
ンドネシア語を使う義務付けに関して一般社会でも、賛成反対論議が熱を帯びている。


< 法原理との矛盾 >
この論説は、その規定に対して反対の立場を取っている。法原理との矛盾が起こっている
のがその理由だ。まず、契約の合法性原理。契約の合法性に関する一般的見解は、言語が
何であるのかを問題にしていない。従来から、契約の合法性は民法典第1320条に示さ
れているように、(1)全関係者の合意の存在、(2)全関係者の遂行能力、(3)対象
の特定、(4)契約対象の合法性、という条件が満たされることにある。[ 続く ]