「ホウクスがインドネシアの弱点(4)」(2017年03月16日)

たとえその旗印の中に異文明社会がユニバーサル性を見出したとしても、現代西洋文明を
否定し打倒しようとする勢力が「リベルテ・エガリテ・フラテルニテ」を尊重するはずは
ないだろう。かれらは西洋文明を打倒したあとで、せいぜいそれに類似するものを別の言
葉で旗印に描くだけであることは想像に難くないにせよ、王者を倒さんものと打ちかかっ
て行く造反勢力が闘争の最中にそんなことをするはずもない。攻撃される側に立ってしま
った西洋文明の未来が楽観視できないのは、世界史に物語られているあらゆる前例を読め
ばわかる通りだ。攻撃が最良の防御であるというのに、非暴力を文明の旗印のひとつに掲
げることでイロニーが生れている。本能と化している不寛容性の調教は、その結末を待つ
しかないのではないだろうか?


不寛容というのは、差異に関連して発生する自分のコミュニティ外の個人や集団に対する
嫌悪や憎悪が生み出すものであり、ヘイトスピーチはその嫌悪や憎悪を呼び覚まし、刺激
し、そして敵対行動へと誘うものだろう。そして敵対行動に誘うときにホウクスが使われ
る。

嘘をついて世の中を混乱させ、自分の力に酔い痴れるというホウクスもあれば、反体制行
動としてそれを行う者もある。無聊を慰めるためにする者がいれば、自分が敵と信じてい
る相手に打撃を与えたくて行う者もいる。

ソーシャルメディアに流されたホウクスの中には、大暴動が全国規模で発生するから、国
民はみんな自分が銀行に預けている金を引き出そうと呼びかけたものや、バタム市内で暴
動が発生して市内は火の海だという書き込みと過去にネット上に流れた写真を組み合わせ
た虚偽情報によってシンガポールからのフェリー乗客が激減した事件、本当は自損交通事
故で死亡したのを故意に歪めて、村の若者が隣村の連中にリンチで殺されたとソーシャル
メディアに書いた村人がおり、周辺諸村からおよそ2千人の暴徒が押し寄せて標的にされ
た村の民家数十軒が打ち壊された事件、異宗教勢力がイスラムへの抑圧に掛かっていると
いうホウクスで、その異宗教の祭祀場所が数千人によって焼き討ちされた事件などの社会
に影響をもたらす事件を誘発したもの以外にも、ハビビ第3代大統領が死亡したというよ
うな単なる嘘の書込みがインターネット上に充満している。

インターネットサイト「ターンバックホウクス.id」に2017年1月1日から2月2
日までの間にネティズンが報告したネット上のホウクス・讒言・扇動件数は1,656件
あり、1月中にネット利用者およそ1万4千人が4万7千回このサイトを訪れてネット情
報の真偽を調べている。届け出られた情報のキーワード45のうち34は社会政治的アイ
デンティティを示す言葉であり、内容は有力な政治家・宗教家・種族リーダーに対する讒
訴やヘイトスピーチがマジョリティになっている。[ 続く ]