「深夜にスラマッパギ?(3)」(2017年03月22日)

その太陽が出ているおよそ12時間という時間を一日と見なす感覚は、太陽が頭上に来た
時間をインドネシア語はtengah hari、オランダ語はmiddag、英語ではmidday (noon と同
義語)などと表現する事実に見ることができる。

一日の中心をその時間だとする慣習はラテン語に由来するa.m.とp.m.という表現が世界的
に定着していることからも伺い知ることができる。a.m.とはante meridiem つまり「日の
中央の前」を意味し、p.m. はpost meridiem つまり「日の中央の後」を意味しているの
だ。

理屈を言うなら、深夜をtengah malamと言うのであれば、その対語としてはtengah siang
というのがロジカルだろう。だが、ありとあらゆるひとがtengah hariという言葉を使っ
ているのである。つまり一日の中心がそれであり、一日を12時間と見なすにせよ、24
時間と見なすにせよ、太陽が頭上に来る時点がそれであることに違いはない。

その生活パターンにおいて、朝というのは目覚めから太陽が高く上ったころまでという認
識がなされていたようだ。だから、朝という言葉を織り込んだ挨拶言葉であるなら、その
時間帯に使われるのが挨拶を受ける者にとっても納得性の高い感覚が生じ、コミュニケー
ションにおける感情面での不適合が避けられる。

ヨーロッパ人も同じように朝という言葉を織り込んだ挨拶をする。オランダ人はgoeden 
morgen、イギリス人はgood morning、フランス人はbon matinというように。マンアヤッ
は自分の言語体験から、どこの国でもだいたい午前6時ごろから午前9〜10時ごろまで
その挨拶を述べ、そのあとはgoeden middag, good day, bonjourと表現を変えると言う。
たいていはみんな朝目覚めた後でその挨拶表現をしており、深夜にそういう言葉を聞いた
ことはない、とのことだ。


では、各国語で朝はどう定義されているのだろうか?
インドネシア語大辞典KBBIを見ると、pagiの語義は次のようになっている。
1.bagian awal dari hari
2.waktu setelah matahari terbit hingga menjelang siang hari
英語のmorningも次のような語義になっている。
1.the early part of the day
2.the time of day from sunrise until noon
matinもmorgenも類似の語義を示しており、共通して言えるのは一日の早い時間帯を指す
語義が最初に来ているということだ。

であるなら、一日の定義が0時から始まる24時間であるなら、0時を過ぎれば朝という
ことになる。実際に英語dayの定義をウエブスター辞典で調べると、次のように出てくる。
1.twenty-four hours
2.the time the earth takes to make a revolution on her axis
3.the time of light
4.from sunrise to senset
イギリス人もアメリカ人も24時間という一日は0時に始まるのであり、0時がmiddayの
対称位置である深夜に置かれている以上、上述の仮設は妥当であり、つまりは深夜0時を
過ぎるとgood morningという挨拶をしておかしくないということになる。[ 続く ]