「アイデンティティ社会(5)」(2017年03月27日) コンパス紙R&Dが2016年11月23〜25日にインドネシアの14大都市で17歳 以上の住民658人にアンケート調査を行った。インドネシア国民が自分のアイデンティ ティシンボルとして上位に置いている要素は何なのかという質問に、回答者は自分がイン ドネシア国民であることを最重要視している、との結果を示した。(A:たいへん重要、 B:重要、C:非重要、D:たいへん非重要、E:不明・無回答、数字はパーセント) 1)インドネシア国民であること A:45.3、B:52.7、C:1.8、D:0.2、E:0.0 2)自分の宗教 A:34.2、B:57.0、C:8.2、D:0.3、E:0.3 3)地縁(自分の出身地と今の居住地) A:16.1、B:58.7、C:24.8、D:0.4、E:0.0 4)種族・人種 A:15.3、B:58.7、C:24.3、D:1.5、E:0.2 5)世界人・コスモポリタン A:12.5、B:53.2、C:31.0、D:2.0、E:1.3 AとBの合算が大きいほど、その要素に高い優先度が与えられていることを示していると 見ることができる。その結果は次のようになった。 1)インドネシア国民であること 98.0% 2)自分の宗教 91.2% 3)自分の出身地や今の居住地 74.8% 4)種族・人種 74.0% 5)世界人 65.7% 1)と2)が比較的僅差でトップグループをなしている状況が、現在のインドネシアの姿 を如実に示しているように思われる。世俗的複合国家であって宗教はどんなに人口や勢力 が大きかろうがすべて一律の横並びであることを原則にしているインドネシアを支持する ひとびとが僅差でイスラム国家を志向するひとびとを抑えているというのが現状だったの ではなかったろうか? だから、宗教アイデンティティにおけるコンフリクトというのは、非宗教概念の世俗国家 であるインドネシア共和国という政治形態とのコンフリクトを持っているほかに、イスラ ムと他の諸宗教とのコンフリクト、更にはイスラム内部でのメインストリームと他の分派 あるいは土着信仰と混じり合った融合型のものとの間のコンフリクトというように、実に 多士済々のコンフリクトに満ち満ちていると言えるにちがいない。 実は、地縁に関わるものや、種族・人種についても、同じようにマルチプルでのコンフリ クト状態になっているから、イスラム教だから云々という偏見を持ち出すには当たらない。 キリスト教界にだって似たような内部コンフリクトがないわけではないのだから。 [ 続く ]