「ダエシュのイ_ア人リーダーが戦死」(2017年03月27日)

ISIS総帥アブ・バカル・アルバグダディの信頼を得て、東南アジアからISISに参
加した戦闘員で編成された大隊指揮官に任命されていたインドネシア人バフルムシャーが、
17年3月13日のパルミラでの戦闘で戦死したとの情報が流れた。

そのときかれの部隊はパルミラでシリア軍と交戦中であり、かれは爆弾を積んで前線に向
かう自動車に乗っていたが、爆弾が爆発するという不慮の事故で死亡したという。ISI
S側はバフルムシャーの死を否定しているが、インドネシア国内のメディアにはバフルム
シャー追悼の書込みが多数出現していて、国家警察はその死亡がほぼ間違いないものとの
心証を得ており、事実関係を更に確認中。


バフルムシャーはバフルン・ナイムと共にISISにおけるインドネシア人グループリー
ダーの双璧をなす人物で、2014〜16年にインドネシアの配下組織を使ってISIS
参加者数百人をバタム島からシリアに出発させている。

インドネシア人リーダーのひとりサリム・ムバラッ・アルタミニ別名アブ・ジャンダルの
死に次ぐバフルムシャーの死でISISに関連するインドネシア人組織は強力な指導者を
相次いで失ったわけだが、テロオブザーバーのアル・ハイダル氏は「それによって組織が
弱体化することはなく、かえって動きを活発化させるリスクが生じている」と語る。

組織メンバーにとって組織の維持は最優先事項であり、失われたリーダーに匹敵する人物
をメンバーが希求するのは明白だ。そのとき、マレーシアやフィリピンのISIS関連グ
ループリーダーたちがインドネシアの組織を配下に抱え込もうとする動きが起こる可能性
が高い。更には、インドネシア人組織員たちが前リーダーに匹敵する人物を自分たちの環
境内で見出せないとき、かれら自身がより有力なグループに服属する希望を持つことも否
定できない。それが国境をまたぐことも、十分に起こりうる。

実際にフィリピン南部のISISセルがインドネシア人メンバーをリクルートしていた事
実が明らかになっている。デンスス88は東ジャワ州クディリで36歳のインドネシア人
をテロリスト容疑で逮捕したが、その男はフィリピン南部のISISセルとの仲介者で、
中部スラウェシ州で9人をリクルートしていた。デンスス88はその全員を逮捕している。
中部スラウェシ州ポソに本拠を置いた東インドネシアムジャヒディン(MIT)はフィリ
ピン南部のテロリストグループと親密な関係を築いてきた。そういう歴史的要因が上の事
件にも関わっているにちがいないようだ。


コンフリクト政策分析研究院(IPAC)のシドニー・ジョーンズ理事は、フィリピン南
部を中心にダエシュは過去2年間、東南アジアにおける新勢力開発に注力して来たと語る。
シリアを中心にするダエシュの中東戦線が危うくなれば、ダエシュ東南アジア司令部が実
質的な動きを開始する可能性は小さくない。

IPACの2016年10月度報告では、フィリピン南部にダエシュ傘下のグループが四
つある。バシラン地方を根拠地にしているイスニロン・ハピロン指揮下のアブサヤフグル
ープは既にダエシュ本部から東南アジアダエシュのヘッドクオーターとして認定を受けて
いる。

次に、アンサルル・キラファ・フィリピナとバンサモロ・イスラム・自由戦士の2グルー
プがあり、アンサルル・キラファ・フィリピナはMITを支援してサントソとその配下た
ちに武器を供給して来た。


フィリピン南部地域はダエシュに参加していた東南アジア出身戦闘員たちの、シリアに代
わる次の戦場になる可能性が高い。シリアのダエシュ支配地域への潜入が難しさを増すに
つれて、かれらの向かう地がダエシュの指示するフィリピン南部となるのは、自然なこと
だと言えよう。ミンダナオ島がその中心になるだろう。東南アジアのダエシュ参加者にと
って、そこは故郷に近い場所でもあるのだから。

それに対抗してアセアン各国の警察反テロ組織は、情報の共通化を主体にした協力体制の
構築に取り掛かっている。