「インドネシア通過海流は東から西へ」(2017年03月31日)

太平洋の海水はインド洋のものよりも温度が高くて塩度が低い。インドネシアの諸島の間
を縫って、太平洋の海水がインド洋に流れ込んでいるのだが、そのルートはどのようにな
っているのだろうか?

その実態を解明するために、海洋観測分析のインドネシアプログラムイニシアティブが探
査航海を開始した。このプログラムは地学気候気象庁・インドネシア科学院海洋学研究セ
ンター・米国NOAAのチームが中心となって行うもので、海洋調査船バルナジャヤ8号
でインド洋側の探査を行う第1レグと、それに平行してサバンからマラッカ海峡経由でカ
リマタ海峡からジャワ海を探査する第2レグに分かれる。


インドネシア通過海流(arus lintas Indonesia = arlindo)と名付けられたこの東から西
に向かう海流の調査では、インド洋側にある温度が高くて塩度の低い海水プールの存在を
見つけ出すことがひとつの鍵となっている。そしてチームは既に、スンダ海峡の西側に太
平洋の海水が溜まっている広大なプールを発見した。

スンダ海峡を出てから探査船は西航し、南緯10度東経98度の第4観測ポイントまで深
さ100〜150mでの海水塩度が一貫して34.6〜34.8PSUであるという事実
が記録された。この温水塊の存在は、ランプン州とバンテン州の西側で気圧が低く、大量
の雨雲が作られ、その両州で豪雨が発生することへの裏付けを与えるものだ。そしてまた、
16年末から17年1月にかけて太平洋側で起こった弱いラニーニャがアルリンド海流の
流れを強くしていたことの裏付けにもなっている。

チームの専門家たちは、太平洋側に起るエルニーニョやラニーニャがアルリンド海流の強
弱に影響をもたらし、インドネシアの気候と気象に変化を与えていることを推測している。
それがグローバルな気候と気象にどれほどの影響をもたらしているのかについては、もっ
と長期間の観測と分析が必要とされている。


今回の探査でもうひとつ確認されたのは、インド洋側の海流がスマトラ島南部沖からジャ
ワ島南部海域まで流れていること。それに関連して、赤道一帯で深度50〜70mの海中
に深層海流があり、表層の海水が西に流れているのと反対に深層海流は東に向かって流れ
ていることが確認されている。