「条件の悪い国境の島」(2017年04月04日)

国境線というのは、たいていその国の僻地にある。都会が文明の先端部分であるなら、僻
地というのは普通、非文明の先端、つまり未開のどん詰まりというのが多い。インドネシ
アもその例にもれず、国境地帯周辺に住む地元民は、自国中央政府の文化経済政策の恩恵
をほとんど受けないまま、独立以来何十年も放置されて来た。

政府が無言で自力救済を勧めているのであれば、地元民はもちろんそれを受けて立たざる
を得ないわけだが、地元民は往々にして隣国の文化経済圏の中に入ってしまう。おかげで
隣国の家電品や自動車などの耐久消費財が闇をくぐって持ち込まれ、隣国の通貨までもが
地元民の日常経済生活に関わるようになる。つまり国境に近い僻地の町や村では隣国通貨
がそのままで流通するのである。

そのような状況の弊害を重視するジョコウィ政権は、国境地域を国内の文化経済圏に引き
戻すべく、さまざまな手を打ち始めた。ルピアを潤沢に用意して隣国通貨の流通をやめさ
せることや、交通の便を改善して国内経済とのつながりを更に深めさせるという方針が実
行に移されている。

交通の便はまず飛行場の充実からで、新規建設や既存のものの拡張などが進められた。と
ころが経済力の追いつかない僻地の住民は、せっかく飛行場が手入れされ、パイオニア航
空会社の定期運航が開始されたにもかかわらず、政府の補助金付きで経済適正料金より廉
価な運賃になっているというのに、それでも飛行機代が高すぎるという事態に直面して、
このままでは政府の方針が挫折しかねない状況を迎えている地方がある。


北スラウェシ州タラウッ(Talaud)県ミアガス(Miangas)島はフィリピンのミンダナオ島の
すぐそばにあり、タラウッ県の首府メロングアネがあるカラクロン島よりもフィリピンの
ミンダナオ島最南端のヘネラルサントスのほうが近い。そしてインドネシア側の都会でる
州都のマナドへは、メロングアネへ行くよりもっと遠い距離を渡らなければならない。ミ
アガス島は210Haの島で、住民人口はおよそ8百人。

このミアガス島の飛行場が整備されて、メロングアネ空港経由マナド間の定期航路が20
17年1月にオープンした。ところが、ミアガス〜メロングアネ間の35分間のフライト
は料金がひとり25万ルピアかかる。メロングアネからマナドのサムラトゥラギ空港へは、
時間は同じくらいだが料金がひとり65万ルピア。

そのため、ミアガス島からマナドまでの飛行機利用者は極度に少ないという状況になって
しまった。最初のフライトにはミアガス島住民が11人乗ったが、そのほとんどはメロン
グアネで下りると、そこから船に乗り換えてマナドに向かったそうだ。船を使えば、マナ
ドまでの料金はひとり15〜20万ルピアで済む。

問題は、メロングアネからマナドへの船便が7日間の航海になることと、海が突然荒れ始
めることがよくあり、事故の怖れや船が避難のために錨地に入って様子を見れば、もっと
日数がかかることになりかねない。

インドネシア政府は僻地への交通確保のためにパイオニア航空制度を設け、住民が利用し
やすい妥当な料金を航空会社に指示する一方、航空会社が赤字にならないように補助金を
与えるシステムを設けている。ミアガスからメロングアネの料金とメロングアネからマナ
ドへの料金が大幅に違うのはそのせいだ。

しかしながら、ミアガス住民にとっては、ミアガス〜マナド間の料金がマナド〜ジャカル
タ間の料金とほとんど違わないという現象に面食らうのも当然にちがいない。