「サテタイチャン」(2017年04月12日)

ブンカルノスポーツコンプレックスの西側を南北に走るアジアアフリカ通りに夜中オープ
ンする何軒ものサテ屋台。従来のサテの概念を覆した素朴なサテと激辛サンバルの組み合
わせを愛好する大勢の都民が、夜中にそこへ集まって来る。

もともとここに店開きするサテ屋台はサテマドゥラが売り物だった。ところが今ここのサ
テは「サテタイチャン」という名前で有卦に入っている。タイチャンとはいったい何のこ
となのだろうか?


サテタイチャンの看板が初めて世に出たのは2年前のこと。その名の由来に関する話はい
くつかあるらしいが、代表的なのはこれ。

東アジア人とインドネシア人のカップルがよくそこへサテマドゥラを食べに来た。トゥカ
ンサテと顔なじみになった外国人の男は韓国人だと名乗った。
「サテはピーナツソースとケチャップマニスをつけるよりも、もっと素朴なのがいいよ。
オレのやり方で作ってみていいかな?」
「ああ、いいよ。やってみな。」

男は串刺しされた生の鶏肉に少量の塩をすりこみ、ライムを絞ってふりかけ、炭火の上で
焙った。焼けあがるとサンバルを皿に置き、サテにまぶして食べる。
トゥカンサテも試食して気に入った。「こりゃ何ていう名前かね?」
韓国人は答えた。「サテタイチャン」


別のトゥカンサテの話では、その韓国人が最初使ったブンブは違うものだったそうだ。か
れはチャベラウィッ・塩・ニンニク・エシャロットを細切れにし、塩とライムだけふりか
けた素朴なサテにつけて食べた。

しかしそのブンブはインドネシア人のテイストに合わない。トゥカンサテたちはもっと一
般のインドネシア人に合うように工夫した。やはりペースト状のサンバルは欠かせない。
だから細切れにしないでブンブをすべてブレンダーに放り込み、少量の水と調味料を加え
てサンバルにした。サンバルは激辛だが、サテにはかけないで皿の端に載せられてくるか
ら、素朴な塩と酸味のサテだけを楽しむこともできる。

かと言って、居並ぶサテタイチャン屋台が全員画一かというと、インドネシア人に画一は
ありえない。一見似たモノであるとはいえ、みんな何らかの工夫を加えて特色を持たせて
いる。

あるひとつの屋台の主は、一晩に5千串は売れると語る。休日前夜になるとそれが8千串
にジャンプする。この盛況に、投資家が食指を動かさないはずがない。スナヤンのサテタ
イチャンに食指を動かしていた投資家が、屋台の主に「バリに支店を出さないか?」と持
ち掛けた。

サテタイチャンの看板は既に首都圏のあちこちにも出没し始めており、またバンドン、ヨ
グヤ、スマラン、バンジャルマシンにまでも屋台が登場しているそうだ。しかしサテ屋台
は基本的に家内産業だから、支店を出すという話にはなじみが薄い。屋台主はよくよくの
決意を迫られることになるから、時間が必要になる。スナヤンの本家サテタイチャンが果
たして支店をバリ島に出すかどうか、それは今後のお楽しみというところ。