「ポンドッキンダモールで麻酔強盗」(2017年04月13日)

2017年4月2日(日)20時ごろ、ひとりで買物を済ませたアンナ・ユリアさんは南
ジャカルタ市ポンドッキンダモール2号館(PIM2)の地下駐車場のB18エリアに向
かった。昇降ホールにいたふたりの男が自分の後をつけてきていることにはまったく気付
かなかった。かの女は自分で車を運転して買物に来たのだ。

B18エリアは広大な駐車場の端のほうにあり、中央部からは目が届きにくい。買った品
物を車内に置き、運転席のドアを開いて乗り込もうとしたとき、いきなり後ろからハンカ
チで口と鼻を塞がれた。近くには顔を布で覆った男がふたりいて、そのひとりが後ろから
かの女を抱きかかえたのだ。ハンカチには麻酔薬が浸されている。

かの女を抱きかかえた男は警察だと名乗り、「Ikutin aja, Ikutin aja.」と耳元で繰り
返しながらアンナさんを運転席に押し込んでから更に助手席に移そうとしている。Ikutin 
aja.とはこの場合、「なされるがままに従え。」「抵抗するな。」という意味に理解され
る。

めまいがして視野が狭まり、呼吸が苦しくなったアンナさんはとっさに運転席のクラクシ
ョンを押し続けた。そのうちに「何が起こったのか?」といぶかる警備員が近付いてきた。
その状況の変化に、ふたりの賊はハンカチと顔を覆った布をかなぐり捨てて、犯行現場か
ら逃走した。現場にはハンカチと布とサンダルが残されていた。


警備員は即座にアンナさんを救急室に連れて行き、応急処置を施した上で事件報告書を作
り、警察に連絡した。そのときアンナさんは連絡先電話番号を明らかにしていない。誰が
悪用するかわからないからだ。

一方、逃走したふたりの賊はすぐに別々に散って逃げた。そのうちのひとりを別の警備員
が止めた。地下駐車場を走って逃げている人間に不審を抱くのは警備員として当たり前の
ことだ。すると男はデットコレクターに追いかけられているのだと説明したから、警備員
はその男を解放した。事件発生を後で知ったその警備員はきっと後悔したことだろう。


そのうちにヨセフ・クルニアワンの名前でソーシャルメディアに妻が被害者になった事件
の詳細記事が載ったため、都民の間で麻酔強盗事件の不安が高まって来た。南ジャカルタ
市警はこの事件を重視して捜査に注力し、4月7日未明にふたりの犯人をタングラン市パ
サルクミスで逮捕した。

数年前に麻酔強盗が流行した時期があり、それを繰り返させないためには犯人の早期逮捕
が不可欠だとの考えから、この事件の捜査には特別力を入れたとのこと。インドネシアは
依然として、寂れた場所と時間帯に女性がひとりで外にいるのが危険な社会であることを
再確認させる事件だった。