「アボリジニの先祖はアフリカ」(2017年04月21日)

オーストラリア原住民とされているアボリジニはアフリカに由来する新人類の仲間である
ことを、最新の調査が物語っている。13万年前にアフリカを出立したかれらは、世界の
さまざまな方向に移動し、その中の一波が東南アジアを経てオーストラリアに到達した。

その調査は更に、パプア原住民とアボリジニの間に遺伝学的近似傾向を見つけ出している。
かれらはデニソワ人との交雑履歴を同じように持ち、パプア人とアボリジニはオーストラ
リア大陸とニューギニア島が分離してできたトレス海峡の作られる1万年前よりもはるか
に古い3万7千年前に別れたものと推定されている。

アボリジニとパプア人の祖先はヨーロッパやアジアの集団から5万8千年くらい前に別れ
たようだ、とクインズランドのグリフィス大学人類進化研究センターのデヴィッド・ラン
バート教授がジャカルタのエイクマン分子生物学研究所で開かれたセミナーで語った。


2016年に発表された教授の調査はその年の十大新発見のひとつに取り上げられている。
かれの説は人類の起源が複数の場所で起こったとする説に対する反論であり、発生した人
類が諸地方に移動したとする説をサポートするものになっている。

先に発表されていたオーストラリア国立大学アラン・ソーン教授のムンゴマンのDNA調
査を踏まえた説である、最古のアボリジニは現代アボリジニと異なる人類であり、既に絶
滅した直立猿人のような旧人類の子孫である、という主張が2001年に出されており、
ランバート教授の調査はそれを覆すものになった。

つまり現代アボリジニ以前に別の人類がオーストラリアにいたと主張するソーン教授の説
は正しくなく、現代アボリジニがオーストラリアで最古の人類なのであるという主張がラ
ンバート教授のものなのである。

ランバート教授が行った調査は、オーストラリア大陸の各地に住んでいるアボリジニのD
NA比較を行ってその近似性と履歴を確認するとともに、パプア人もその対象の中に加え
て分析した。そして引き出された結論が、かれらはひとつの移動の波としてアフリカから
ニューギニアとオーストラリアのエリアにやってきた者たちであり、それが3万7千年前
くらいに住み着いた地域によって分離し、独自の道を歩み始めたものであるということだ。
ランバート教授はフローレス島で発見されたホモ・フロレシエンシスやもっと以前に発見
されたジャワ原人、更にはスラウェシなどで洞窟に描かれた4万年前の壁画などに言及し、
インドネシアは旧人類の歴史を解明する手がかりをたくさん秘めている重要なエリアであ
る、と講演の中で指摘している。


一方エイクマン分子生物学研究所副理事は、ランバート教授のパプア人の定義を間違って
解釈してはいけないと注意した。

ランバート教授がDNAサンプルを取得したのはパプアニューギニアの人々であって、ニ
ューギニア島西半分のインドネシア側が東半分と同一であるかどうかはまだ実証されてい
ない、とのこと。インドネシア側では209もの種族語を持つ多彩な集団に分かれており、
遺伝子調査は今後追々進められていくので、実態は徐々に解明されていくだろう、と副理
事は述べている。