「無謀な路上検問突破(前)」(2017年04月25日)

南スマトラ州ルブッリンゴーの東環状道路ファッマワティ通りで2017年4月18日昼
頃、ルブッリンゴー県警本部と東リンゴー署が路上検問を実施していた。「検問実施中」
と表示した看板を立てて、SOPに即した手順を踏んでの何ら問題ない業務態勢だ。

そのとき一台の乗用車ホンダシティがその検問場所を高速で通過しようとした。検問に従
事していた警察員たちは色めき立った。数人が停車を命じるが、それに従うどころか、検
問を突破しようとしてスピードを上げる。三人の警察員があわやぶつかるという瞬間に身
をひねってやり過ごした。そんな状況に直面した時、その車には犯罪者が乗っているにち
がいない、と誰もが考えて当然だろう。

ナンバープレートBG1488ONを読み取ったひとりが、即座に州警察統合サービスセ
ンター管理システムにアクセスして、その番号の登録状況を探る。登録されたものなら、
いつでも捕まえて油をしぼることができる。ところが結果は凶と出た。
「おい、その車はニセナンバーだぞ。」

これでそのホンダシティが犯罪に関わっていることがほぼ確定した。数人が警察車とオー
トバイに駆け寄って急発進させる。K警部補もその中のひとりだった。治安警戒ユニット
に所属している警部補は戦闘銃SS1V2を携帯している。凶悪犯の逮捕には必要なもの
だ。
路上検問ではあっても、銃器を持って行くことは許されている。路上検問こそ、警察にと
っては、これまで逮捕されないまま動き回っているお尋ね者を見つけ出す機会でもあるの
だから。


警察車は逃げようとするホンダシティに追いついてきた。マイクを使って「停車せよ」と
呼び掛けるが、乗用車は走り続ける。赤信号で数台が止まっているところまで来たが、ホ
ンダシティは停止しようとせずに赤信号を突っ切った。
K警部補の堪忍袋の緒が切れた。警部補は車体に当てないようにして警告射撃を行った。

観念したのだろうか、それとも逆集を企てているのだろうか、ホンダシティは高速走行を
やめてスピードを落とし、ついに停車した。場所はヨッスダルソ通りのプリオッ交差点。

ホンダシティの右後方に停まった警察車から車内の人間に対し、外に出るようマイクで呼
びかけたが、だれも出てこない。ホンダシティの窓ガラスは黒いフィルムが貼られている
ため、車内の様子がわからない。呼びかけが繰り返されたが、車内の者たちは沈黙を続け
たままだ。

K警部補は意を決して警察車から降りると、銃を構えたままホンダシティの横へと移動し
た。車内から狙い撃ちされれば、良い標的になる。
「出て来い。」警部補が叫ぶが、車内は沈黙したままだ。
「出ないと撃つぞ。」警部補はしばらく車内の変化を待ったが、依然として変化は起こら
ない。

引き金にかけていた警部補の指が引かれた。7発の銃声が響き、7発の弾丸が次々と車体
に吸い込まれて行った。そして思いがけないことが起こったのだ。車内から、女や子供の
悲鳴が聞こえてきたのである。[ 続く ]