「ジャカルタ〜スラバヤ間ローロー船運航計画」(2017年04月27日)

2017年のイドゥルフィトリ大祭は6月25・26日だ。その一週間ほど前からルバラ
ン帰省が始まるだろう。例年、ルバラン帰省では貨物運送車両の交通規制が行われている。
生活基幹物資を除いて、帰省ルートを使う貨物の長距離輸送は禁止される。物流に異変が
起これば、市場の需給関係が狂って物価に必ず影響が出る。

プアサからルバランにかけては必ず物価が上昇する。国民はそれを当然としているものの、
物価は安定しているほうが良いに決まっている。物資の長距離輸送のために海上貨物輸送
ルートを確立させれば、そういった季節的な要因によって道路運送に障害が起こっても、
物価への影響は小さくできるかもしれない。

こうして政府運輸省は、5月初めからジャカルタ〜スラバヤ間のローロー船運航を開始さ
せる計画を組んだ。トラック輸送業界にこの新ルートを利用することを習慣付けさせて、
ルバラン帰省時にも物流が止まらないようにさせたいという意向だ。


ところがこの計画には強敵がある。道路破壊の元凶とされているトラック輸送業界の積載
重量オーバー違法走行がそれだ。それを取り締まる仕組みとして、国道のあちこちに積載
貨物重量をチェックする計量ポイントが設けられており、重量超過トラックはそこから先
へは行かさず、積荷を減らして出直して来い、という措置が定められている。ところが、
その業務が地元政府に委ねられたためにコルプシの源泉となり、「金を払えば行かせてや
ろう」が当たり前になった。こうしてトラック輸送業者は大儲けをし、その利益の一部が
計量ポイントの公務員の懐をうるわせ、国は破壊される国道の修繕に国民の税金を注ぎ込
むという、救いのない構図が作られてしまった。

道路補修予算が無限にあるわけでもないから、道路に穴があくたびに穴埋め工事をするよ
うな効率の悪さはだれもしたくない。こうしてルバラン帰省の前という一年一度の大工事
が毎年繰り返されて来たのである。一年のほとんどの時期に穴だらけの国道を通らなけれ
ばならない自家用車族国民は踏んだり蹴ったりという苦難を強いられている。
計量ポイントの業務を正常化させれば、トラック輸送業者の大儲けはノーマルな儲けに落
ち着き、輸送効率の低下によってローロー船を使っても大したコスト差にならないだろう
というのが政府側の思惑だ。

政府は既に計量ポイントの業務を地元政府から国に戻させ、当面はチェック業務を停止し
ている。今回のジャカルタ〜スラバヤ海上貨物輸送ルート開始に時を合わせて、ジャワ・
スマトラ・スラウェシ・カリマンタンで25ヵ所の計量ポイントのチェック業務が再開さ
れる予定になっている。

トラック輸送事業者協会会長は、ジャカルタ〜スラバヤ間の大型トラックでの陸送に荷主
が払ってくれるのは750万ルピアしかない、と言う。「それで運転手の賃金、燃料、ス
ペアパーツ等々のコストをカバーした上、適正な利益を出さなければならない。ところが
政府が考えているローロー船の費用はトラック一台6百万ルピアだ。それでは、諸コスト
をカバーするのは無理だ。」

ジャカルタ〜スラバヤ間海上貨物輸送ルート設立計画は昔から何度もトライされては消滅
するという歴史を歩んできた。計量ポイントの業務さえ正しくなされたらすべてうまく納
まるのかどうか、結果はきっと近いうちにわかることだろう。