「再び、レープは普通で当たり前のもの(前)」(2017年04月27日)

インドネシアではどこでも、女が夜中に人通りのまばらな路上をひとりで歩いていたり、
あるいは真昼間でも人気のない寂れた場所にひとりでたたずんでいたりすると、必ず男が
寄って来る。

バリ人の知り合いから聞いた話にこんなものがあった。ある家である夜に夫婦喧嘩が起こ
った。わたしの住む田舎の村でも、派手に夫婦喧嘩する家庭がある。たいていいつも決ま
って、騒ぎが起こる家はあそことあそこ、というようになっているものだ。他の家庭が実
態はどうなのか、わたしにはわからないが。

で、怒りに駆られて奥さんは家から走り出て、どこかへ歩いて行こうとした。「あんな夫
の家には二度と戻るもんか!」と決心したにちがいない。住宅地を出てから細い街道を、
月明りを頼りに歩いていると、オートバイに乗った男がひとり通りかかり、奥さんの横を
通り過ぎてからUターンして戻って来た。そして奥さんに話しかけた。「家まで送って行
ってあげよう。」

そのとき奥さんはたいへんなリスクを察知した。乗ったが最後、そのまま人里離れた森の
奥に連れ込まれてレイプされ、身ぐるみはがされた自分の全裸死体が何日も後にたまたま
通りかかった地元民に発見されるのがオチではあるまいか、と。オートバイの男を全く無
視した奥さんはくるりと身をひるがえすと、全速力で今来た道を駆け戻った。

妻が家出したと思っていた夫は、息を切らせながらも無事な姿で戻って来た奥さんに安堵
したそうだ。インドネシアには、他の国では考えられないような夫婦喧嘩の仲直り方法が
あることを、そのときわたしははじめて知った。


その話と同工異曲のような事件が新聞に載った。2017年4月16日(日)未明、23
歳のAは酒を飲んだあと、オートバイに乗って家を出た。ブカシ県バブランの街道を通り
かかったとき、まだひとの往来が始まっていない道路脇に、少女がひとりでたたずんでい
るのを見た。

少女は北ブカシ郡ハラパンジャヤの自宅へ帰るために、乗合アンコッが通りかかるのを待
っていたのだ。Aは「オレが送ってやるよ。」とその少女、中学8年生のN15歳に提案
した。少女はその親切な申し出に乘った。

北ブカシへ向かったAはそこからまだあまり進んでいないというのに、途中でガンラパガ
ンクバレンの物陰のある空き地にオートバイを乗入れ、少女を引きずり下ろすと襲い掛か
った。暴力を使いながら少女の身体をわが物にしたAは、少女が自分にのしかかっている
Aの唇に咬みつき、Aの首に爪を立てたのにひるんだ。

少女はすぐに身を起こすと、街道に向かって走った。Aは少女を捕まえようとして、後を
追って走る。そのとき、タンク車が街道を通りかかった。少女はタンク車の後ろにしがみ
つく。追い着いたAが少女を下ろそうとして服を引っ張った。

タンク車から転げ落ちた少女は全身傷だらけの重傷を負う。血まみれになった少女の姿に
驚いたのはAの方だった。[ 続く ]