「聳え立つ老木の森」(2017年05月12日)

西ヌサトゥンガラ州のロンボッ島に樹齢350年を超える木々が40〜50メートルの高
さに聳え立っている森がある。東ロンボッ県プリンガバヤ(Pringgabaya)郡グヌンマラン
(Gunung Malang)村プルマタン(Permatan)部落にあるその森へは、ロンボッ島周遊道路で
ラブハン(Labuhan)港方面に向かわなければならない。リンジャニ火山の東側に位置し、
グヌンマラン丘の向こうに標高3,726メートルのリンジャニ山が望見される場所だ。
マタラム市から東に75キロほど離れている。

森の地所は4Haあり、個人所有者4人がそのうちの1.5Haを観光スポットとして開
放している。昔そこは人跡未踏のジャングルで、1970年代に綿農園に開墾され、19
82年に農園事業用地として個人所有者に売却された。その森林に希少な老木がたくさん
あることから、東ロンボッ県庁は土地の買戻しを所有者に働きかけているのだが、4人の
所有者はそこを観光事業に使いたいとして買戻し要請を拒んでいる。


その老齢の巨木というのは、学名Ficus albipilaというクワ科の樹木であり、根が幅広く
張り出す独特の姿をしていて、根の高さは地上170センチくらいに達する。幹は大人3
〜4人で抱えるくらいのサイズだ。この樹はボゴール植物園にも植えられており、そこは
人気のあるスポットになっている。

幹はカポックの木に似ているが、肌はつるつるしていてよじ登るのが難しい。


所有者が開放したエリアにはその樹が道路脇のものを除いて40本あり、元気な樹もあれ
ば枯死した樹もある。この樹にはミツバチが巣を作り、木の実は野鳩の餌になっているそ
うだ。

インドネシアのひとびとはこの樹を古代樹(pohon purba)と呼んでいるが、古代から生き
続けて来たわけではない。この樹はオーストラリアとアフリカにしか生育しないと言われ
ており、どうしてロンボッ島の、しかもプルマタン部落にだけ生えているのかはいまだに
謎だ。
「よその大陸から渡り鳥が種子を運んできたからだ。」
「いや、何百年も前に起った津波で、オーストラリアから種子が流れ着いたからだ。」
といった諸説が主張されているものの、実情はまだ解明されていない。グヌンマラン村の
村長代理は、それらの樹はオランダ人がやってきて統治を開始する前からそこに生えてい
た、と述べている。つまりは350年以上前から生き続けているということになる。


この観光森にやってくる観光客は駐車料金だけ徴収されている。二輪車は5千ルピア、四
輪車やバスは1万ルピア。やってきたひとびとは、珍しい樹を背景にしてセルフィー三昧
に浸る。明るい陽光の下に聳える古代樹の群れを背景にしてビデオクリップを制作したア
ーチストもいる。

ロンボッを観光で訪れるなら、是非一度は訪問してみたい場所だ。