「アホッ裁判に諸外国が失望(前)」(2017年05月15日)

バスキ・チャハヤ・プルナマ都知事(通称アホッ)の宗教冒涜発言裁判で、北ジャカルタ
地裁の判決公判が2017年5月9日に南ジャカルタ市ラグナンの農業省ビル内オーディ
トリアムで開かれた。

侮蔑・冒涜という極めて感情的で主観の色合いに満ちた問題を審議した北ジャカルタ地裁
判事団はキリスト教徒のアホッがイスラム教を冒涜したとの判断をくだし、検察公訴人か
らの一年間の入獄という求刑よりも重い入獄2年という刑罰を現職都知事に与えた。


ムスリムが国民のマジョリティを占めるインドネシアで、マイノリティ層をアイデンティ
ティとする現職都知事に対するプライモーディアルレベルを触診することを可能にした今
回のアホッ宗教冒涜発言事件は、諸外国のインドネシアオブザーバーにとって、興味津々
のできごとだったにちがいない。判決のあと、各国では次のような報道が流れた。

アメリカのCNBCは5月10日のオンラインニュースで「宗教冒涜裁判の判決がインド
ネシアのプルーラリズム評価を粉砕」と題する記事を載せ、裁判関連の解説ばかりか、イ
ンドネシアに対する今後の投資展望についても触れた。それによれば、イギリスの経営コ
ンサルタント機関分析員の意見として、今後企業がインドネシアへの投資を計画する際に
この判決は重大な検討要因になる可能性が高い、と書かれている。インドネシアで法治が
未確立であること、さらに政治環境の騒動が強まりつつあることへの懸念がそこに反映さ
れている、と分析員は述べている。

シンガポールのストレーツタイムズは「アホッ入獄という驚くべき判決がインドネシア国
民の声を二分しつつある。」と題するオンライン記事の中で、宗教冒涜という決まりはア
ンフェアであるというヒューマンライツウオッチのコメントを採り上げ、更に国連・EU
・アセアン人権機関などが表明したアホッ裁判判決に対する遺憾の念をも伝えている。

VOAネットサイトは「ジャカルタ都知事に対する宗教冒涜判決に、信教の自由への打撃
を見る」という記事を掲載した。インドネシアのマジョリティ国民が考えていた、アホッ
の都知事選挙敗退で宗教冒涜裁判の判決はソフトなものになるだろうという予想をその判
決は覆した、とのコメントが見られる。[ 続く ]