「アホッ裁判に諸外国が失望(後)」(2017年05月16日)

オマンの英語ネットサイトであるタイムオブオマンは「キリスト教徒知事宗教冒涜刑罰に
対する抗議がジャカルタで」という記事の中で、アホッに対する地裁判決への拒否と抗議
行動がジャカルタで続発している状況を報道している。抗議行動に参加したインドネシア
のマイノリティ層有力者たちの見解を紹介するとともに、駐インドネシア英国大使のツイ
ッターコメントをも載せた。
「わたしはかれのジャカルタにおける業績に憧憬を抱いている。かれがアンチイスラムで
あるとは信じられない。わたしの祈りをかれの家族のために。リーダーたちは寛容さと和
合を護って行かなければならない。」というのがそのツイートだ。


インドネシアに向けられたそのような国際的視線を前にしてジャカルタのシャリフヒダヤ
トゥラ国立イスラム大学政治コミュニケーション学教官は、アホッ宗教冒涜事件裁判の判
決に関連するさまざまなマスメディア報道がインドネシアに対する国際社会の見解に影響
をもたらしているため、政府・アホッ支持者・アホッ反対者の全員が政治的緊張を緩和さ
せなければならない、と語った。

「一審判決に不満であれば、それを批判するのは自由だ。しかしその抗議は二審三審とい
う法的プロセスの中で行われなければならない。法が大衆法廷に頭を垂れるか、あるいは
また地裁判決が大衆の圧力で覆されるか、今デモクラシーはそういう試練に直面している。
法的プロセスは本来のレールから外れてはならないのだ。」

プルーラリズムを標榜するインドネシアが世界最大のムスリム人口を擁しながらも中庸イ
スラムの姿を国際社会に示してきたこれまでの実績も、アホッ判決に関する諸外国の報道
によってズタズタに斬り裂かれようとしている。

ジャカルタのパラマディナ大学国際関係学教官はそれに関して、メディアの論調と、プル
ーラリズムと中庸イスラムを旗印とするインドネシアの国際外交ロジックとの整合性がど
んどん崩れていくだろう、と予測する。

「信教の自由や基本的人権といったコスモポリタンでユニバーサルな諸価値から離れよう
とする宗教観の強まりを、メディアの論調は示すようになるだろう。だから政府は近年劣
化傾向に陥った社会的結束を盛り返すべく、国民の団結精神を高めて行くよう努めなけれ
ばならない。インドネシアのイメージを保とうとして国際外交面でどんなに努力しようと
も、国内に問題の根が残されているかぎり、たいした成果をあげることはできない。」

国内に国民の社会的結束を再興することこそ、現在インドネシアが直面している大きなチ
ャレンジであるにちがいない。[ 完 ]