「ヘイト政治運動が対立社会の原因」(2017年05月29日)

「いま国民の間を覆っている不愉快な状況は、異宗教者が共存しているからではない。わ
れわれの生活は現在、ヘイト政治運動のために危機に直面している。アメリカでドナルド
・トランプが大統領に選出され、イギリスがEUから脱退したのも、そのヘイト政治運動
のせいだ。SARAに関わる不寛容イシューが昨今、とみに強まっている。しかし、イン
ドネシアの状況は昔も今も変わっていない。昔からインドネシア人は多様性の中で協調し
ながら生活してきた。多様性ははるか昔から現在のように存在してきたし、そのために日
常の暮らしが乱されることはなかったではないか。

それぞれの宗教信徒は、われわれの先祖が多様性の中で平穏に暮らしてきたことを、今こ
そ思い返さなければならない。われわれの先祖たちは穏やかに、そして快適に、今と同じ
環境の中で生活してきたのだ。今、各宗教は手に手を取って平和のために闘わなければな
らない。どの宗教信徒も常に善をなし、他の宗教信徒に平安をもたらす恩寵となるように
努めなければならないのだ。」

ドリヤルカラ哲学大学教官フランツ・マグニス‐スセノは中部ジャワ州マグランのボロブ
ドゥル観光園で開かれた国際会議の記者会見の場でそう語った。


同じ場でナフダトウルウラマ事務局長は、インドネシア人は元来、異質なものごとに対し
てたいへん寛容な民族だった、と言う。「だから、どの宗教信徒であろうとも、インドネ
シアに平和を定着させ、宗教間の寛容性を維持させることに努めなければならない。イン
ドネシアは寛容で、すべての違いを受け入れ、和合に満ちた国であるということを全国民
に啓蒙し、家庭と教育機関が一致して次世代の若者たちの信念にしていかなければならな
い。われわれの子や孫が間違った教えを信じることのないように、われわれが護っていか
なければならないのだ。」


ムハマディヤ中央指導部事務局長は電話インタビューに答えて、宗教間の対立や差異への
不寛容姿勢はまだまだ危険なレベルに達しておらず、それほど心配する必要はない、との
見解を述べた。「オーバーな表明をしているのはラディカルグループだ。かれらは実相を
反映させず、インドネシアは安全な国でないというイメージを掻き立てている。これは投
資や観光などのセクターにとって迷惑この上ないものだ。インドネシアのメインストリー
ムイスラムと宗教界は依然として中道派の手中にある。

ただし、インドネシアのラディカリズムは上昇基調にある。宗教ファナティズムが起るの
は、フランツ・マグニス師の言う通り、グローバルとローカルの政治ファクターがその原
因を作っている。インドネシアでこの状況は2019年大統領選挙まで上昇を続けるだろ
う。だから、それに対抗するために、政府・保安部門・市民の一致協力が必要とされてい
る。政府は独力で抑圧的なアプローチをしてはならない。それに平行して行われなければ
ならないたいへん重要なことは、社会格差の是正・法優位環境の実現・清潔で強い政府の
構築だ。

イスラム教徒の陳情行動が盛んに行われたのは理由がある。まず、法的経済的にフェアに
扱われていないという感情。次いで治安部門の抑圧的で過保護な姿勢。三つめは政党、特
にイスラム系政党が民衆の声に鈍感になっていること。その三要素に対する不満が解消さ
れれば、イスラム教徒の大規模デモはおのずと消滅するだろう。」ムハマディヤ事務局長
はそうコメントした。