「国民をハイクオリティ老齢者に育てる」(2017年06月07日) 2015年の国民老齢者人口は2,150万人だった。12人にひとりという割合だ。老 齢者とは60歳を超えた者という定義になっている。20年後の2035年にはそれが4, 820万人に膨れ上がると予想されており、そうなると6人にひとりという割合になる。 州民年令中央値が30歳以上になると、その州は老齢者州という位置付けがなされる。今 現在、インドネシアでは東ジャワ(33歳)・中部ジャワ(33歳)・バリ(32歳)・ ヨグヤカルタ(30歳)・北スラウェシ(30歳)の5州が老齢者州だ。 ちなみにインドネシア全国の中央値は27.6歳で、28歳以上の州は次の通り、なかな か多い。 リアウ・西スマトラ・ジャンビ・バンカブリトゥン・ランプン・ジャカルタ・バンテン・ 西ジャワ・南カリマンタンそして上の5州 中央値のもっとも低い州はマルクと東ヌサトゥンガラの23歳となっている。 州民老齢化というのは、家族計画プログラム・新生児乳児死亡率の低下・出生率の低下・ 平均余命の上昇などが成功していることがもたらす結果であるとはいえ、実際には州内の 経済センターが他州から若い労働力を引き付けているかどうかという要因も強く影響して いる。その要素に欠ける州は青年人口が他州の経済センターへ移動するため、若年者人口 が減少して老齢者州になっていくという図式も関係している。 国連のワールドポピュレーションエージング(WPA)報告によれば、インドネシアをは じめとする発展途上国の老齢化はかつて先進国が体験したものよりもハイピッチで進行し ているとのこと。だから各国政府は老齢者人口の増加がもたらす負担に対処できるよう、 早め早めに対策を講じていかなければならない、とアドバイスしている。 住民管理家族計画庁長官は、老齢者人口の中で低クオリティの老人が負担をもたらすのだ、 と語る。「病気がちな老人は生産性のレベルがたいへん低い。生物学的にも年令が増加す れば身体機能は低下するのが当然であり、非遺伝的慢性的な病患に煩わされることになる。 しかし若いうちから衛生と健康に配慮した生活を実践することで、発病を防止したり、あ るいは遅らせることができる。将来のクオリティある老齢者を生み出すために、今現在3 5〜44歳の年齢ブラケット国民に対して健康な生活を送らせるよう、国はもっと干渉し なければならない。」 年を取れば病気に罹りがちになるというのに、インドネシアの老齢者はその費用負担をカ バーするための健康保険や保健社会保障に加入していない者が大半を占める。WPA20 15年報告によれば、インドネシアの老齢者国民の8.1%しか老齢年金の受給者になっ ておらず、65歳超の男性の54.3%と女性の27.9%は依然として労働していると のこと。 インドネシアには生産的老齢者のための労働市場が存在していない。基本的に雇用者は1 5歳から65歳までの勤労者を採用しようとするのが通例であり、先進国には若年層が好 まない職種を老齢者にオファーするようなシステムが作られているが、インドネシアにそ のようなものはないし、またそのような方式がインドネシア文化に合致するかどうかもわ からない。かつては家族主義の中で老齢者は一族が面倒を見るのが基本とされ、しかし一 族の人数が減少し、更に個人主義が強まった現在、かつての基本様式は既に揺らいでいる。 昔は一族が面倒を見ない老齢者に地縁関係の住民が自主的に世話することも代替様式とし て実践されていたものの、今ではそのようなあり方を期待するのは不可能になっている。 結果的に一族が面倒を見ない老齢者はそのまま国の負担となってのしかかってきている。 病気にせよ、貧困生活にせよ、老齢者がもたらす負担は国が担うことになるわけで、低ク オリティの老齢者が増加すれば、国の負担は大きく膨れ上がることになる。 負担を避けることはできないものの、負担を小さくするために国民をクオリティの高い老 齢者にしていくことは、重要な国家事業であるに違いない。