「バドゥン県を観光する」(2017年06月15日)

バリ島のグラライ(Ngurah Rai)国際空港やクタビーチ(Pantai Kuta)がデンパサルにある
と思っているひとはいないだろうか?クタビーチも、最近大人気を博しているパンダワビ
ーチ(Pantai Pandawa)も、デンパサル市でなくバドゥン県にある。バリ島南部の西海岸に
あるチャング―(Canggu)地区からブラワビーチ(Pantai Berawa)〜プティトゥグッ(Peti-
tenget)〜スミニャッ(Seminyak)〜レギアン(Legian)〜クタビーチと南に下って来る一帯
はすべてバドゥン県の重要な観光資源なのである。

このバリ州最大の観光資源を擁するバドゥン県は、ツーリズムを支えるための施設で満ち
溢れている。星級ホテルは150軒客室数2万4千、非星級ホテルは460軒あって客室
数は1万を数え、他のもろもろの宿泊施設を合わせればバドゥン県にある総客室数は5万
室になる。州庁に納められるホテルレストラン税は2015年実績で、ホテル税だけで1.
3兆ルピア、レストラン税は2.4億ルピアにのぼった。州庁はそのうちの2割を観光収
入の小さい州内他県に補助金として回している。


バドゥン県はバリ島中央部のブラタン湖やウルンダヌ寺院のあるブドゥグル地区の東側が
最北端に当たり、そこからバリ島最南部のブキッウガサンと呼ばれる半島の南海岸まで南
北およそ80キロに及ぶ縦長の県だ。そのため、県境はブレレン県・バンリ県・ギアニャ
ル県・デンパサル市・タバナン県の5県市に接している。

バドゥン県の擁する観光スポットは北の山岳地帯にヌンヌンの滝(Air Terjun Nungnung)
とカンチングミ寺院(Pura Kancing Gumi)、ウブッのモンキーフォレストから近いサゲの
モンキーフォレスト(Alas Pala Sangeh)とサダカパル寺院(Pura Sada Kapal)、ムンウィ
(Mengwi)地区のタマンアユン寺院(Pura Taman Ayun)、デンパサル市に近いクラバンラギ
ッ寺院(Pura Keraban Langit)、一大繁華街をなしているチャング―地区・プティトゥグ
ッ地区・スミニャッ・レギアン・クタ。グラライ空港脇の地峡を通って更に南へ下ると、
シーフードグルメセンターのあるクドガナン(Kedonganan)〜ジンバラン(Jimbaran)ビー
チ。ブキッウガサン地区に入るとドリームランド(Dreamland)、パダンパダンビーチ
(Pantai Padang-padang)、ウルワトゥ寺院(Pura Luruh Uluwatu)、ニャンニャンビーチ
(Pantai Nyang-nyang)。そしてブキッウガサン最南部の海岸線にあるパンダワビーチ、ヌ
サドゥアビーチ(Pantai Nusa Dua)、サムビーチ(Pantai Samuh)、タンジュンブノアビー
チ(Pantai Tanjung Benoa)と続く。最後のとどめが、丘の中央部にあるガルーダウィスヌ
クンチャナ(Garuda Wisnu Kencana)だろうか。

バドゥン県の海岸線は84キロにのぼる。行楽地について回るのが公衆トイレ問題だ。理
想的には4百メートルごとに必要とされているが、なかなか進展していないのが実態のよ
うだ。観光客は自然の美と名所旧跡を愉しんだあと、伝統芸能を鑑賞し、さらに住民の生
活に密着している祭事を見学する。祭事には住民の文化が結晶しており、それが確立され
る過程で歴史や哲学がそこに影を落としている。バリ観光にはまだそこまでの内容を観光
客に紹介する態勢が整えられていない、と有識者は批判している。

たとえばカパル(Kapal)地区には、シアッティパッ(siat tipat)という、餅投げ合戦のよ
うな伝統行事がある。投げられるのは餅でなくティパッだ。ティパッというのはヤシの葉
を編んで作った入れ物に米を入れて炊いたものであり、一般にはクトゥパッ(ketupat)、
ジャワ語やスンダ語ではクパッ(kupat)、バリ語はティパッと名称が異なっている。

その祭りは一見、せっかく作ったコメを粗末に扱っているという印象を与えるかもしれな
いが、実はそうでなく、必ずその祭りが行えるように精魂込めて米作りを行えと子孫を指
導した先祖の知恵なのである。この祭りを今年も行えたことを賀して豊作を祝う感謝の念
を捧げ、また来年も必ず行えるようにと子孫に決意を促して米作りに励む意欲をかき立た
せるのが、このシアッティパッの裏側に秘められた哲学だ。今現在はまだ、観光客はシア
ッティパッを見物に来ても、大勢の地元民がティパッを投げ合う合戦を見物して帰るだけ
であり、祭りの由来や哲学を観光客に説明することが充分に行われていない。

バドゥン県はこの種の県民の間で行われているさまざまな祭事を観光資源に取り上げ、そ
の催しをより深く整備していくことで観光客のリピートを促そうと計画している。