「ASLI」(2017年06月19日)

ライター: メディア就労者、短編作家、レイニーMPフタバラッ
ソース: 2017年1月21日付けコンパス紙 "Asli"

いくつかの町でサテカンビン食堂の名前を掲げた看板に「asli」というラベルが添えられ
ているのを頻繁に目にする。「Sate Kambing Haji Darsono Asli」「Sate, Tengkleng, 
Sop Kambing Pak Karim Asli」「Sate dan Nasi Goreng Bang Kumis Asli」。わたしの心
は穏やかでない。人名の後にどうしてasliという単語が添えられなければならないのか?
名前を書くだけで十分ではないのだろうか?たとえば「Mi Ayam Bakso Bang Gondrong」
「Gudeg Ibu Darmo」「Gepuk Nyonya Liem」「Nasi Uduk Bang Dul」というように。

Tesamoko(Tesaurus Bahasa Indonesia Eko Endarmoko)はasliの同義語を「benar」「ori-
sinal」「sah」「sejati」などとし、反意語を「gadungan」「palsu」「artifisial」など
としている。上の実態を見るかぎり、サテ料理ビジネスにインチキが起こっている印象を
受ける。世に知られたおいしいサテやヤギスープの食堂の名前が自分の店をはやらせよう
と企む他の同業者に盗まれているのだ。それゆえにasliという言葉を使って自分が「ハジ
ダルソノのアスリである」「バンクミスのアスリである」とお家元であることを主張し、
同時に、同じ名前を使っている他の業者はニセモノであるという密やかな差別化プロモー
ションを行っているのである。料理ビジネスでは、食材のニセモノばかりか、名の知られ
た流行っている食堂オーナーの名前までもがニセモノに冒されているようだ。ニセモノと
いうのは、言うまでもなく、バンクミスやニョニャリムやハジダルソノのクローニング人
間という意味ではない。


商業界で屋号を盗むのは、目新しいことではない。工業化が起こって地上に商業が大発展
して以来、売れ行き好調で良いイメージに包まれた商標は、剽窃の危険にさらされてきた。
商標盗難は法律に違反する偽造やコピー行為である。瓶詰飲用水アクア製造会社が、商標
の中にアクアという単語を織り込んだ別の瓶詰飲用水生産者と法的係争を起こした事件は、
われわれの記憶の中にある。アクア側はアクアという名称がかれらの独占であり、法規に
従って登録されているのだと主張した。アクアはasliという言葉を付け加える必要がない。
なぜなら法的に、その会社だけが瓶詰飲用水製品にアクアという名称を付ける権利を持っ
ているのだから。

グルメ観光ファンにとってもっと怖いのは、健康に悪影響を及ぼす食材のニセモノが使わ
れていることだ。asliという言葉は、品質・味・イメージを示す一種のトレードマークと
して使われている。「Jual minuman asam Jawa pakai gula asli」と書かれた垂れ幕があ
る。gula asliというのは、ある種の化学成分を使って作られたサッカリンのような人工
甘味料でないことを意味している。gula asliとはサトウキビの汁から作った白砂糖やパ
ームヤシの汁から作った赤砂糖であり、美味で健康に悪影響を及ぼさないものだというの
が消費者の理解になっている。

鶏にさえasliという言葉が使われるのは、実にユニークである。あちらこちらで「ayam 
kampung bakar asli」と書かれたカキリマ商人の垂れ幕にお目にかかる。必然的に「ayam 
kampung palsu」があるのか、という疑問が湧いてくる。あるオンラインメディアで報道
され、ソーシャルメディア利用者が広く伝達したニュースでは、見た目からは本物との見
分けがつかないニセモノの米、ニセモノの卵、ニセモノのキャベツが中国で生産されてい
ると言う。これまでのところ、特定の化学成分を使い、機械によるプロセスで作られたニ
セモノayam kampung palsuが生産されているという話をわたしは聞いたことがない。そう
でなく、普通よく耳にするのは、食品販売者が不当な利益を求めて売っているayam tiren
に警戒せよという言葉だ。(訳注:tirenとはmaTI kemaREN、つまり前日に死んだという
意味だが、ジャワ人が言うkemarin/kemarenは過去全般を指すから、それが一日前かどう
かはあてにならない。)だから、そこで使われているasliの語は、ayam kampungと言いな
がらayam negeriを使って消費者を騙す販売者に対するビジネス競争ストラテジーとして
のものであるにちがいない。

料理ビジネス競争において、asliの語義は辞書に記されたものを超越している。ビジネス
競争における販促機能の他に、クオリティ・味・イメージばかりか産地まで描き出す商標
の役割をも務めているのだ。ソーシャルメディア言語を使うなら、「Asli, gue banget!」
となるだろう。