「相次ぐテロ事件」(2017年07月03日)

警察を狙うテロが続いている。2017年6月30日夜、南ジャカルタ市国家警察本部に
近いファラテハンモスクへ機動旅団メンバーおよそ20人がイシャの礼拝に来た。そして
モスク内に来ていた一般市民と親睦の礼を交わしていたとき、ひとりの男性がいきなり大
型ナイフを振るって「お前たちはカフィルだ」と叫びながら襲撃した。被害を受けたのは
ふたりで、負傷したために病院へ運ばれた。

アラビア語源のkafirとは非イスラム教徒全般を指す言葉であり、その中にはイスラム教
徒に敵対して攻撃を向けてくる者がいる反面、イスラム教に入信しないものの、ムスリム
との平和共存を指向する者もいる。敵対する相手に自衛行動を採るのは当たり前のことだ
が、平和共存を望む相手に入信を強制して不服従者を殺戮するのは、支配と勝利を自己存
在の根源に溜めている異常な精神構造を示すものだろう。イスラムでは背教者をmurtadと
呼び、カフィルの中には含めないのが一般的なようだから、テロリストたちの間で使われ
ている術後の用法も独特な定義付けがなされているように見える。


ナイフの男はふたりを襲ってからモスクの表に出て来て、次の獲物を探しながらブロッケ
ム(Blok M)バスターミナルに向かってゆっくりと歩を進めた。モスクの中から機動旅団員
が追いかけてきてナイフ男に拳銃を向け、警告射撃を空に向けて二発撃った。ナイフ男は
その機動旅団員を次の獲物と見たようで、拳銃に怖れる風もなくナイフを向けて近付いて
いく。機動旅団員の警告をまったく無視するその男が接近して来たため、旅団員は男の身
体に向けて二発、銃を発射した。男はしばらく歩いてから、路上に倒れた。

その後死亡した犯人は、持っていたKTPからブカシ県南チカラン郡スカレスミ村居住者
の28歳の男性であったことが判明した。犯人はまたファラテハンモスクにバッグを持ち
込んでおり、その中から爆弾が見つかっている。


この事件に先立って6月25日の午前3時ごろ、北スマトラ州警察本部をふたりのテロリ
ストと見られる男が襲撃した。そのとき第2警備ポストにいた警備要員はふたりで、ポス
ト内の要員がいきなり首と胸を刃物で刺され、出血多量で死亡した。ポストの外にいた要
員は第1ポストの機動旅団員に応援を求め、駆けつけた旅団員がふたりの襲撃者に発砲し
て、ひとりが射殺され、もうひとりは重体で病院に収容された。襲撃した男たちは、刃物
を振るいながら「アラーフアクバル」と叫んだとのこと。

それ以前の警察を襲撃するテロ事件は、5月24日21時ごろ発生した東ジャカルタ市カ
ンプンムラユバスターミナルでの自爆テロ、4月11日昼に長剣を持って中部ジャワ州バ
ニュマス県警本部を21歳の男が単独襲撃した事件、4月8日朝、東ジャワ州トゥバン県
で交通警官を銃撃したテロリスト6人が射殺された事件、と続いている。


テロリズムオブザーバーのアル・ハイダル氏はその現象について、警察に対する襲撃行動
はダエシュ/ISISと結びついているインドネシアのテロリストにとって、上から与え
られている指令であり戦略の一部になっているため、これからもやむことなくおこなわれ
るだろう、とコメントした。
「ましてや、警察の反テロ部門による捜査がますます深められ、かれらを追い詰めはじめ
ているのだから、かれらはそれを続ける以外にしかたがないはずだ。これまでの警察襲撃
は勤務中の警察員に対して行われていたが、今後自宅にいる警察員がターゲットにされる
可能性も考慮していかなければならない。それとは別に、このような細かい襲撃事件が多
発してそれに目を奪われているときに、大きな事件が別のところで計画されることも警戒
しなければならない。」と同氏は警告している。