「マラウィの戦闘がインドネシアに飛び火するか?」(2017年07月04日)

国内全国各地に作られているダエシュ/ISISに忠誠を誓ったテロリストセルは、ジャ
ワ・スマトラ・カリマンタン・スラウェシなど全国のほとんどの州をカバーするネットワ
ークになっている。中でももっとも活発に活動しているのが、ジャマアアンサルッダウラ
の一派だ。

国家警察デンスス88は北スマトラ州警本部襲撃事件に関連して、スマトラ島北部で12
人の関係者を逮捕して取り調べている。その中にフィリピン南部ミンダナオ島のマラウィ
市にインドネシア人戦闘員を送り込む資金を手配した者がいた。手配された7千5百米ド
ルで4人のインドネシア人がマウテグループの戦闘員としてミンダナオ島に潜入している。
もちろん、マウテに参加したインドネシア人がその4人だけとは限っていない。


ダエシュ/ISISが本拠のシリアとイラクで圧迫されているため、新たな根拠地として
ミンダナオ島のアブサヤフグループをISIS東南アジア支部に指名した。アブサヤフグ
ループの頭領がイスニロン・ハピロンで、はじめはミンダナオイスラムカリフ国と名付け
ていたマウテグループの設立者であるオマルカヤム・ロマト・マウテとアブドゥラ・マウ
テの兄弟はイスニロン・ハピロンの支援者になっている。

IPACのシドニー・ジョーンズ氏によれば、オマルカヤムはインドネシアと深いつなが
りを持っており、インドネシア国内にマウテグループと呼応する動きを作り出すのは決し
て困難なことではないとのこと。オマルカヤムはミンハティ・マドライスというインドネ
シア人の妻を持っていて、ミンハティの一族が西ジャワ州ブカシに持っているプサントレ
ンでエジプトから戻って来た2009年に後進の育成を行ったことがある。オマルカヤム
とアブドゥラはその経歴の中で、中部ジャワ州トゥガル出身のサヌシを精神的指導者に戴
いて、過激思想を一層強いものにしている。

そういった人脈はマウテグループ戦闘員がインドネシア国内に潜入することで、容易にひ
とつの武装勢力を生み出すことに利用できる。インドネシア国軍は西ヌサトゥンガラ・中
部ジャワ・東ジャワなど16ヵ所にダエシュ/ISISのセルが存在していることを既に
把握しているが、セルのテロリストたちは地元民衆の中に溶け込んでいるため、判別が困
難になっている。マウテ戦闘員が潜入してきてかれらを動かしながらテロ活動を進めると
きわめて危険であることから、国軍はミンダナオ島と国境を接している北スラウェシ州や
東カリマンタン州での潜入ポイントの監視を強め、また警備艇から潜水艦まで動員して、
潜入を水際で防ぐ態勢を整えている。

フィリピン政府はミンダナオ島の反政府勢力と力の対決を行う方針を徹底させており、マ
ラウィ市での戦闘は激化している。フィリピン軍はオマルカヤムとアブドゥラの兄弟であ
るモハンマッ・ノアイム・マウテをカガヤンデオロ近くで捕らえたことを明らかにした。
マウテグループとフィリピン軍との戦闘がこの先どうなっていくのかはまだ予断を許さな
いようだ。