「手押し荷車に乗ってブルーファイアー見物」(2017年07月07日)

ブルーファイアー見物の観光客がめっきり増えたイジェン火口湖では、パルトゥディンの
入山口から火口湖リムまでの距離がおよそ3キロあり、徒歩で行くしかないため、不便さ
がある。その対策として政府はロープウエーを設ける計画を立てており、海抜2千4百メ
ートルという高所でのロープウエー建設とメンテナンスはスイスやフランスが十分な経験
と技術を持っているとして、その建設プロジェクトをオファーしている。

政府の計画によれば、そのロープウエーには5ヵ所の駅が作られ、片道を15分間で走破
する。8〜12人収容できる18両のキャビンが等間隔で並び、1時間に5百人が輸送で
きるものだそうだ。


ところで、上に「徒歩で行くしかない」と書いたが、実はojek gerobakあるいはojek 
troliという搬送サービスが行われている。イジェン火口湖は硫黄の産地であり、固形硫
黄に加工して火口湖から運び出す採鉱者が大勢立ち働いていて、かれらは一回に70〜8
0キログラムの硫黄を肩に担いでパルトゥディンまで運び出している。一日にたいてい2
〜3回往復するそうだから、一日の稼ぎはおよそ2百キログラム掛ける硫黄の相場だ。か
つては8百から1千ルピア程度がキロ当たり単価だったが、今では1千ルピアを超えるレ
ベルになっている。それでも一日の稼ぎは知れたものだ。

採鉱者の中にも、人力でなく文明の利器である荷車を使って硫黄を運び出す者が出てくる。
ところがここ数年、硫黄の産出量が減ってきた反面、採鉱者の数が増加しているために以
前はひとりあたり2百キロ超の稼ぎが一日にあったというのに、今やひとりあたり120
キロ程度しか稼げなくなってしまった。そこへ来て、観光客がめっきり増えた。3KMを
歩きたくない観光客も必ず混じっている。ならば硫黄の代わりに観光客を荷車に乗せて運
ぼう、というアイデアが自然と湧き起って来たというのがオジェッグロバッの発祥ストー
リー。


荷車にはふたりまでしか乗れない。その荷車を三人の採鉱者が押し引きして起伏を乗り越
えていく。往復料金は50〜70万ルピア。得た金を三人で分ければ、ひとり16万5千
から23万ルピアの収入となる。硫黄を120キロ運んで15万ルピア程度しか稼げない
のだから、オジェッ商売のほうがはるかに儲かるというわけだ。

オジェッグロバッサービス業に従事する採鉱者がロープウエー建設に反対するのも当然だ。
ロープウエー建設によるバニュワギ観光の興隆が近隣住民の経済活動を押し上げるのは疑
いもないのだが、バニュワギ県庁はこの降ってわいたような反対の声にどう対処するか、
いま頭を悩ませている。