「地名表記の原則」(2017年07月24日)

ライター: インドネシア大学文化科学部教授、アヤトラハエディ
ソース: 2005年10月7日付けコンパス紙 "Menuliskan Nama Tempat"

最初アムステル川(オランダ国)の河口に堤防、つまりダムが築かれたと語り部は物語る。
無人の河口に位置するそのダムは「アムステルの堤防」を意味するアムステルダム(Amstel 
Dam)と名付けられた。その後の発展の中で、堤防が設けられたその河口にひとが住むよう
になる。最終的にその地の一般住民は、かれらが愛する町の歴史を忘却してしまった。か
れらは自分の町をアムステルダム(Amsterdam)という名称で記憶している。あらゆる種類
のナルコバビジネスをセットにして。

似たようなストーリーはわが国で、大小を問わず都市として認識されているたくさんの場
所でも起こった。たとえばジャカルタ湾に位置するひとつの岬で過去に釜(priuk)を含む
たくさんの陶器が見つかった。そのためにその場所はタンジュンプリウッ(Tanjung Pri-
uk)という名称で知られることになった。その後の発展の中で、その岬に人間がますます
たくさん住み着くようになり、一般住民はその場所で過去に陶器が完全な形で、あるいは
粉々になった姿で見つかった歴史を忘れてしまい、後にその場所はTanjungpriukという名
前で知られることになった。


地名の表記は、発音することほど易しくはないようだ。それを職務として地名の表記の原
則を考察するひとびとがいる。もし個別の地域あるいは全国規模での範囲なら、大問題に
なることはない。ところが表記方法は国際的なことがらになっており、国連さえもがその
種の問題を取り扱う専門機関を編成した。すなわちUNGEGN(国際連合地名標準化会
議)だ。いまだに無名の島を9千以上持っている国連メンバー国であるインドネシアは、
その国連機関と密接な関係を保っている。1980年代からインドネシアはその活動に関
わっており、地名の標準的な命名方法や表記方法ついてのセミナーが開催されるなど、種
々の活動が行なわれてきた。

地名表記で禁止されていることがらのひとつに、数字を使うことがあげられる。なぜなら、
地図の中に使われる数字と混同してしまう可能性があるからだ。地図上のシンボルに使わ
れる数字は、標高や経緯度等々を示している。そのため、どんなに長い地名であってもわ
が国の国土地図に関する責任を負っている国土地理測量統括庁は地名を一語で表記する原
則を固持している。つまりTanjung Priukというのはあるひとつの岬の名称であり、
Tanjungpriukというのは岬とは無関係な地名として使われている。

一般的な場所の名前が地名に使われる場合も同様だ。たとえばGunung PangrangoやGunung 
Rinjaniに見られる、山を意味するgunungの語はそこでは一般名称だが、Gunungsitoliや
Gunungsahariというのは、そのような名称の山があるわけでなく地名であるため、一語で
表記されなければならない。もともとは川を意味していたCi LiwungやCi UjungもCirebon
やCimanggisのように一語で表記されなければならない。なぜなら、それらは川の名称で
なく地名になってしまったからだ。すると問題が起こる。Cimanggisという地名はもとも
とCi Manggisの岸辺にあったからそのような結果になっているのだから。

他の人々がそれを読むことを容易にし且つ理解しやすくするのが、われわれが何かを表記
する目的である、という原理を思い返すなら、どんなに長くとも地名を一語表記するとい
う原則にも問題が発生する。次の諸表記のいったいどれが、読みやすく理解しやすいもの
だろうか?
purbasinombamandalasena
purbasinomba mandalasena
purba sinomba mandala sena

われわれが地名を決める際に、国土地理測量統括庁ができるだけ短い地名にするようアド
バイスしているのは、きっとそれが原因であるにちがいない。

わが国がマレーシアとの国境にある二つの島を失った事件を思い返してみるがよい。その
二つの島は、インドネシア側では何千もある無名の島の一部だったようだが、マレーシア
はその島に名前を付けて地図の上に表示していた。われわれが何千もの無名の島を調査し
て名前を付けるヘビーな作業を強いられているのも、それが原因だ。

最後に、西スマトラ州の数字都市の名称は、いったいどちらが読みやすく、覚えやすく、
理解しやすいだろうか?
2 x 11 6 lingkung
それとも
duakalisebelasenamlingkung