「ジャカルタへのアーバナイゼーション(下)」(2017年08月11日)

ヌサンタラの各地からバタヴィアへの住民移住は1800年代から始まっていた。たいて
いのひとは働いて金を稼ぎ、生活の質的向上を図るのを上京の目的にしていた。物語「サ
イジャとアディンダ」の主役であるサイジャも、アディンダと結婚するために都のバタヴ
ィアへ上って三年間働き、金や宝飾品を携えて故郷へ戻って来たではないか。サイジャに
は故郷へ錦を飾る明白な理由があったが、上京者のマジョリティはバタヴィアに、そして
後のジャカルタにとどまって首都の住民になった。ジャカルタと村落部や地方都市の間に
は歴然たる格差があったからだ。「サイジャとアディンダ」の物語には1800年代半ば
の状況が投影されている。

首都圏の経済性の高さがヌサンタラ各地から住民移住を起こさせる動機になっていたのは、
数百年来変わらない。コンパス紙R&Dが2017年6月18〜19日に17歳以上のジ
ャボデタベッ住民459人を対象にして行ったサーベイでは、ジャボデタベッの外から移
住してきたと自認するひとがほぼ5割にのぼった。かれらが首都圏に移住してきた目的は
次のようなものだ。
働くため 38.7%
伴侶の移住に従って 28.5%
親や子供の移住に従って 14.7%
学業のため 10.4%
その他 7.7%

ジャカルタで働くというのは、フォーマルセクターの雇用がたっぷりあるということを意
味している。中央統計庁最新データによれば、都民の75%がフォーマルセクターで就労
しており、そして賃金レベルは国内最高の月額406万ルピアになっているのだ。
サーベイ回答者は首都圏の在住期間を次のように答えた。
生まれた時から住んでいる 52.7%
10年以上 42.7%
6〜10年 2.2%
5年以下 2.4%

そのそれぞれのブラケットに対して、首都圏暮らしをある段階で切り上げて故郷に帰る考
えをもっているかどうかという質問をしたところ、次のような結果が引き出されてきた。
10年以上在住 ある31.6% ない2.6% 不明無回答65.8%
6〜10年 ある40.0% ない10.0% 不明無回答50.0%
5年以下 ある63.6% ない0% 不明無回答36.4%

交通渋滞・洪水・犯罪多発などの重度な問題を多々抱えるジャカルタではあっても、ひと
は経済性の高さに目がくらむのだろう。生活の快適さを蝕む社会的な悪条件でさえ、金を
持つことでその解決が個人的に可能になるとひとびとは信じているようだ。

とはいえ、すでにジャカルタ住民となって働いているひとびとの85%は、地方部の親類
縁者や知己友人たちに首都圏への移住を勧める気はない、と答えている。既に飽和状態に
なってインフラと住民人口の適正な比率をオーバーしてしまった首都圏に今頃やってきて
も、本人には苦しいことのほうが多いだろうし、既存住民にとっても更なる人口増はかろ
うじて残されている快適さまで破滅させていく元凶になりかねないという認識が、かれら
の間に強まっているということなのだろうか?


首都行政は何十年もの昔から、いかにジャカルタへの移住を閉め出すかということに知恵
をふり絞って来た。1970年にアリ・サディキン都知事は「ジャカルタ閉鎖都市宣言」
を行い、首都のKTPを持つ者だけに居住と就労を許可する政策を講じた。2006年に
スティヨソ都知事は順法作戦を実施して、住居や雇用者のない上京者の都内居住を禁止し
、違反者には罰金5百万ルピアあるいは3カ月の拘置が科された。2014年、バスキ・
チャハヤ・プルナマ都知事は住民育成作戦を実施し、上京してくる移住者は移住の目的と
就労の予定について明確な背景を有し、出身地からの移転届出書を作成するなど住民管理
行政規則を遵守しているかどうかを条件にして、首都への移住を許可する政策を進めてい
る。

今もまだ継続されている住民育成作戦について、コンパス紙R&Dのサーベイは概してそ
れが好評であることを明らかにしている。
質問)現在行われているジャカルタへのアーバナイゼーション制限方針(住民育成作戦)
は効果的だと思いますか?
回答)効果的だ62.3%、 効果的でない31.8%、 不明無回答5.9%
[ 完 ]