「サルの逆襲」(2017年08月18日)

昔からも折に触れてニュース種になっている、人間を襲うサルの事件がまた話題になって
いる。ひとつは中部ジャワ州ボヨラリ県カラングデ郡の森林地帯に近い農村住民を襲うオ
ナガ猿の話。

その森林地区は元々オナガ猿のハビタットではなく、そのため襲撃をかけてくるのはほん
の二三匹のグループで、よくある百匹近い大集団が部落を襲って食べられるものを略奪す
る形態とは様相を異にしている。襲撃を受けている部落民の話では、オナガ猿の姿を見か
けるようになったのはほんの一年半ほど前のことだそうだ。そのころは人間の邪魔をする
こともなかったから、住民たちはほとんどオナガ猿の存在を気にかけていなかった。

ところが2016年6月にそのサルは攻撃的になり、家畜の子ヤギやニワトリを襲って噛
んだりするようになった。2017年の6〜8月にオナガ猿に襲われて噛まれた人間は1
1人にのぼっている。「かれらの生活環境に食べ物は豊富にある。飢えのために攻撃的に
なっているのとは違うようだ。かれらは突然ふるまいを変化させた。人間を恐れなくなり、
攻撃してくる。」部落民のひとりはそう語っている。

中部ジャワ州天然資源保存館は諸方面に協力を仰ぎ、合同で攻撃的なサルを捕らえる作戦
を開始したものの、仕掛けた罠にはまるサルはまだ一匹もおらず、別のおとなしいオナガ
猿をかれらの頻繁に出没する場所につないでおびき出そうとしているが、それも成功して
いない。

部落民は森林近くを開墾して畑作を行ってきたが、オナガ猿の襲撃を恐れて仕事が手につ
かなくなっている。大勢の集団で仕事をしに行っても、いざ自分の畑を手入れすることさ
えビクビクもので、森林の奥に畑を作った者はそんなことさえできなくなっている。既に
部落民の死活問題の兆候が表れてきていることから、中部ジャワ州天然資源保存館は暴力
オナガ猿をデッドオアアライブ原則で捕獲する決意を固めている。だが、風のように現れ
て襲撃し、また風のように去っていく襲撃者を捕捉するのは、いまだに困難だ。

州天然資源保存館スラカルタ地区分室長は、そのオナガ猿は以前、人間に飼われていたも
のではないか、と推測する。「飼い主がかれらを痛めつけたり、あるいは十分に世話しな
かったかもしれない。そしてかれらが飼い主から逃げ出したり、あるいは飼い主が飼うの
をやめて森に放ったのではないだろうか。かれらがハビタットでない森に住み着いて、周
辺で出会う人間を襲っているのは、そんな要因がからんでいる可能性が考えられる。」


南スラウェシ州ブルクンバ県キンダン郡のいくつかの村でも、近くの森に何十年も昔から
住んでいるサルが住民を襲いはじめたことに当惑している。住民がはじめてサルの襲撃で
被害を受けたのは2017年7月25日だった。住民が連れ立って森林近くの畑に仕事に
出かけたとき、いきなり30匹を超えるサルの集団がかれらを襲い、ふたりがサルの爪で
身体を裂かれて縫合するほどの怪我をした。住民はサルに仕置きをしようとして7月30
日に大勢で森に入ったところ、反対にサルの大集団に襲われて怪我をし、逃げ帰った。そ
れ以来、住民のほうがサルを恐れるようになり、森に近い畑に仕事しに行くこともなかな
かできなくなってしまった。サルは森の中で、あちこちに集団でかたまっており、その近
くを通るのはなまじの神経でできることではない。森の向こう側に畑を作った者などは、
もはや森を通り抜ける度胸を失ってしまっている。

キンダン郡長によれば、7月25日以前に住民がサルに襲撃された事件は一度もなかった
そうだ。サルが突然狂暴になって人間を襲いだしたのはサルの群れの間に狂犬病が伝染し
ているからではないか、との推測が投げかけられているものの、まだ立証はなされていな
い。
「住民たちの多くは当面、畑仕事を休むことで合意している。どうしても仕事する必要が
あれば、大勢の仲間と一緒に出掛けて作業している。それも森の奥まで入らない、境界近
くの場所に限られる。かれらは襲撃に備えて、さまざまな道具を携帯している。昔はそん
なことをする必要がなかった。」

ブルクンバ県キンダン郡はバワカラエン山の麓に位置し、シンジャイ県とバンタエン県に
境を接している。山麓一帯は深い森林で、コーヒー・カカオ・コショウ・クローブなどの
住民の畑作は森林近くまで広がっている。中には森林の中の空き地も開墾されたところが
ある。収穫期になると、かれらは畑地区に設けた掘立小屋に寝泊まりするのが普通だ。