「ソロのティルトナディ」(2017年08月21日)

中部ジャワ州スラカルタ別名ソロの町で、鉄道駅ソロバラパン(Stasiun Solobalapan)と
バスターミナルのティルトナディ(Tirtonadi)の間にスカイブリッジが設けられて、20
17年6月にオープンした。鉄道駅から北に直線距離で5百メートル余り離れたバスター
ミナルに、鉄道旅客は徒歩で移動できるようになった。逆も同じだ。全長634メートル
のスカイブリッジは高さ5メートル幅3メートルで天蓋で覆われており、通行者に優しい
環境を提供している。


ティルトナディバスターミナルはジャカルタや西ジャワあるいはジョグジャや東ジャワの
マランやスラバヤなどの主要都市を結んで走る長距離バスのターミナルであり、24時間
稼働している。インドネシアのバスターミナルは概して無秩序で汚く、ごみごみしていて、
安全でないのが通例で、ティルトナディバスターミナルもその例外でなかった。市民にと
って陸路の表玄関のひとつがそのありさまでは、「なんとみっともないことか!」の一語
に尽きていたにちがいない。

2007年はじめに、ソロ市庁はティルトナディバスターミナルの再活性化計画を打ち上
げた。現大統領ジョコ・ウィドドがソロ市長を務めていたときだ。ターミナルを整備し、
明るく安全で秩序ある姿に戻し、ターミナルビルの待合室は冷房完備でワイファイ・フラ
ット画面TVを置き、またビルの上階はショッピングセンターにする。同時に5Haの用
地の一部を緑豊かな公園にして、市民に憩いの場を提供するというのがプランの骨子だ。


ソロ市にはふたつの王家が併存している。元々のマタラム王家であったカスナナン・スラ
カルタ(Kasunanan Surakarta)とオランダ人の介入で作られたマンクナガラン(Mangkuna-
garan)がその二つで、カスナナンはスラムッリヤディ通り(Jl.Slamet Riyadi)の南側を領
地とし、その地域はカンプンキドゥル(kampung kidul)と呼ばれた。カンプンロール
(Kampung lor)と呼ばれた北側の大部分はマンクナガランの領地に当たる。経済活動はお
のずと町の中心部を含む南部が盛んになり、北部との間に格差が作られてしまった。ティ
ルトナディにショッピングセンターを設けることで、北部地域の経済を刺激する拠点にで
きる。

ティルトナディバスターミナルは元々マンクヌガラ8世がカンプンロールに作った公園だ
った。カンプンキドゥルにはスリウェダリ(Sriwedari)公園をはじめ、公共スペースは事
欠かない。マンクナガランも領民のためにバレカンバン(Balekambang)を作り、その近く
にティルトナディを設けた。ティルトナディ公園には大きな池が作られ、舟遊びやジャワ
人の慣習であるクンクム(kungkum = 水中に身体を浸しながら行う瞑想)が行える場所に
なっていた。おかげでソロの民衆はボヨラリ(Boyolali)にあるプンギン(Pengging)の水浴
場まで行く必要がなくなった。この大きな池はブンガワンソロが氾濫して起こす洪水の対
策も考えて作られたものだったが、埋め立てられてしまって今はない。

バスターミナルに機能が変わったティルトナディの一部は再び公園として再整備され、三
々五々市民がやってきてはのんびりと過ごしている。