「ポリシチュペッ」(2017年09月04日)

ライター: コラムニスト、アグス・ヘルマワン
ソース: 2017年8月13日付けコンパス紙 "Polisi Cepek"

ジャカルタではあらゆるものが金になるし、何でも金にすることができる。そのジャーゴ
ンは首都住民の間で昔から語られてきた。努力するかぎり、必ず金が手に入る。だから各
地からひとが続々と金稼ぎにジャカルタへやってきて、あらゆるものごとを金にした。

こうして、多分世に二つとない新職業「ポリシチュペッ(Polisi Cepek)」別名「パッオガ
(Pak Ogah)」が生まれた。もちろん、警察官ではない。その呼び名は1981年から19
93年まで国営テレビ局TVRIで放送されたテレビシリーズ「シ ウニル(Si Unyil)」
の登場人物「パッオガ」からとられた可能性が高い。

その長期連続番組の中でパッオガは無職失業者のシンボルだ。通行人にだれかれ構わず声
を掛けて、「パッ、チュペッ、パッ。」と百ルピアをねだる。当時、百ルピアは小さい金
額でなかった。


*訳注:ちなみに、1米ドルあたりのルピアレートは次のように変遷している。
1980年12月 626ルピア
1982年12月 702.5ルピア
1983年3月  970ルピア
1985年12月 1,110ルピア
1986年9月  1,664ルピア
1990年12月 1,842ルピア
1995年12月 2,248ルピア


後になって、首都や他地方の路上で私的に交通整理をする者にチュペッの名称が被せられ
た。ひとりで行う場合もあれば、複数で行うこともある。男だけがしているわけでもなく、
中央ジャカルタ市スナヤンのアシアアフリカ通りでは女性が行っている例もある。いたる
ところでかれらを目にすることができる。特に渋滞頻発地区、あるいは小路の入り口や住
宅地区の出入り口、Uターン個所、三叉路、四つ辻などだ。

この職業は結構な収入になる。パッオガ別名ポリシチュペッは数時間仕事すれば、ひとり
あたり数万から十数万ルピアの現金を手にすることができる。いくつかの場所でかれらは
シフト制を行い、朝から夜中まで活動しているのも、不思議なことではない。

せびることまではしないにせよ、運転者がかれらに小銭を与えなければ不愉快そうな顔を
する者は数多い。かれらは交通整理の手伝いをしているのだろうか?それは状況次第だ。

場所によっては、かれらの活動のせいでかえって交通渋滞が引き起こされている例も少な
くない。交通渋滞や交通が入り乱れると、かれらは自分たちの出番をそこに見出すのだ。

交通渋滞の中を自分が先に潜り抜けたいと思うなら、運転者は窓を開いて手にした小銭を
ちらつかせればよい。かれらは喜んで他の車両の前に身体を張ってくれるだろう。金を持
つ者は常に特別扱いされるのである。この国の肖像そのものだ。Uターンが許されない場
所ですら往々にして、かれらは交通の流れを切り開いてUターンさせてくれる。


首都警察が交通整理ボランティアのいる場所と人数のデータを取り始めたというニュース
が最近流れた。ジャカルタの交通渋滞を緩和させるために、かれらが必要だと考えられて
いるようだ。首都警察交通局長ハリム・パガッラ警察長は、ボランティアはパッオガでな
い、と述べた。ところがそのあと、なぜパッオガをボランティアとして活用しないのかと
質問されて、かれはそうするつもりだと答えている。

数千人にのぼると見られるボランティアに警察は交通整理の特別訓練を与える計画だ。か
れらはアイデンティティを示すチョッキを着用し、シフト制で働くことになる。かれらに
対する報酬とその資金供給については、都庁・定常寄付者・首都警察交通局の共同合意で
決められることになる。

しかし、ポリシチュペッ/パッオガ/交通整理ボランティアの問題はそれで済むようなも
のではない。かれらが出現するようになったのは、路上の運転者が割り込みを好み、車列
の最後尾に着くのを嫌い、加えて道路インフラと交通マネージメントが妥当なものになっ
ていないといったことによって、法規不服従と交通秩序破りを臆すことなく実践している
点に負うところが大きいためなのである。