「釘地雷」(2017年09月08日)

インドネシア語の「ranjau」は「地雷」と訳されることが多いが、もともとはとがった小
さい棒状のものを地面に突き刺しておき、人間や獣にそれを踏ませて負傷させるようにし
た罠の一種だったようだ。日本では忍者の撒きビシという携帯式のものが同じ機能を持っ
ているが、最初から地面に突き刺して固定させておくものはなかったのだろうか?

現代インドネシアでは「ranjau paku」という言葉が頻繁に登場する。これは通りかかる
車両のタイヤをパンクさせるために、撒きビシのように道路上に撒いておく、釘等を素材
とする罠のことだ。

罠にかけるのはパンク強盗もあるが、パンク修理客を増やすということも目的のひとつに
なっている。大都市では普通、道路の中央を四輪車が通り、道路脇は二輪車が通ることが
多いため、必然的にランジャウパクの被害者は二輪車がマジョリティを占め、その近辺の
オートバイバンク修理業者が儲かるという因果関係になっている。

パンク強盗の場合は、銀行で目を付けたターゲットの自動車を強盗が二輪車で追いかけ、
信号などで止まっているときに車輪の前にランジャウパクを投げて踏ませるという忍者も
どきの手口が使われるケースもある。

しかし警察や民間グループがこの犯罪防止のために大型磁石を引きずって道路を歩き、ラ
ンジャウパクを回収することを行っているので、そうなると犯罪者も負けてはおらず、大
型磁石で回収されたあと、数時間してまたランジャウパクを撒くといういたちごっこが繰
り返されてきた。

都内で回収活動を行っているグループのひとつは、一年間に250キロのランジャウパク
を集めたそうだ。警察はもっと手広く回収活動を行っており、集まったランジャウパクは
トンの単位に上っている。

そして最近は、犯罪者はいたちごっこをしない新手を考え出した。それは先をとがらせた
硬質プラスチックの断片を釘の代わりに使う方法だ。これだと大型磁石で回収することも
できない。断片は空洞ができるようにチューブ状の形に作られており、刺さればタイヤの
空気は容易に抜けて行く。傘の骨のような形状を想像すればよい。実際にわたしも、東ジ
ャカルタ市プロガドン工業団地に向かうプムダ(Pemuda)通りで被害を受けたことがあり、
タイヤに刺さっていたランジャウは傘の骨型をしていた。

パンク修理客を増やす、おとなしいほうの犯罪では、昔はパンク修理屋の位置からあまり
遠くないところにランジャウパクを撒くスタイルが多かったが、最近ではかなり遠い場所
に撒いている。そしてその周辺に見張りを立て、パンクした二輪ライダーに「しばらく行
くとパンク修理屋がある。」と教えて、そこへ誘導するテクニックが使われている。

二輪ライダーがパンク修理屋へ行くと、「この空気チューブはもう修理不能だ。」と言葉
巧みに運転者に信用させ、新品チューブを高く売りつけるということが行われる。

被害者になったトゥブッ住民27歳の話では、ガトッスブロト通りとロキシースクエア付
近でランジャウパクに二回やられた由。そして問答無用で新品の空気チューブと交換され、
一回は5万ルピア、もう一回は8万ルピアを払わされたとのこと。

警察や自主活動グループが集めたデータによれば、都内・ブカシ市・デポッ市にランジャ
ウパク危険地帯が39カ所あり、主なところはコミュータラインパルメラ(Palmerah)駅前
のシンプルッ(Simprug)行き車線やプジョンポガンラヤ(Pejompongan Raya)通りなどであ
る由。

高速走行しているときにランジャウパクにやられると横転する危険が高いため、二輪車は
40km以下で走行するように、と警察は勧めている。