「タンココバトゥアグスへファウナ観察の旅(前)」(2017年09月20日)

北スラウェシ州のマナド(Manado)へ行けばブナケン(Bunaken)島での海遊び、と相場が決
まっていたものが、昨今では東岸のビトゥン(Bitung)に向かう観光客も増えている。

マナドの町からビトゥンの町へは、マナド・ビトゥン街道で44キロの道のりだ。ビトゥ
ンの町に入れば、宿泊施設はたくさんある。

ビトゥンという町にローカル化したツナの刺身を味わう愉しみがあることは、かつて紹介
した。
http://indojoho.ciao.jp/2016/0825_2.htm
http://indojoho.ciao.jp/2016/0826_2.htm
だが、たいていのインドネシア人観光客が目当てにしているのは、それでない。

ビトゥンはかれらにとって、タンココバトゥアグス山国立公園(Taman Nasional Gunung 
Tangkoko Batuangus)の自然保護区を探索するベースキャンプなのである。ビトゥンから
自然保護区までは15キロほどの距離だ。そして自然保護区にもっとも接近したい観光客
はタンドゥッルサ町(Kelurahan Tanduk Rusa)に宿を取る。そこにも軽便な宿泊施設があ
り、そこから自然保護区へは10キロの距離になる。


自然保護区のトレッキングを愉しんだコンパス紙女性記者の体験記は、読者をきっとかの
地に誘ってくれるにちがいない。

午前5時半、ガイドの運転する車は自然保護区に着いた。本当は午前5時にトレッキング
を開始するようガイドに言われていたのだが、宿を出るのに遅れてしまった。「でもきっ
と、メガネザルにもヤキにも会えますよ。」

ヤキについても、本サイトで過去に紹介している。
http://indojoho.ciao.jp/koreg/xflona.html
ページ内の記事「食い尽くされる保護動物」(2014年11月14日)

タンココバトゥアグスの自然保護区は、ほかにも犀鳥やカワセミなどの宝庫になっている。
国立公園自体は山から海岸まで変化に富むトポグラフィを備えており、公園内のトレッキ
ングコースは千変万化の趣を持っている。

歩いていると朝露に濡れた草の茂みがいつしか靴とズボンの裾を濡らしている。どこから
とも知れない鳥の呼び合う声が森林の中に響き渡って、その瞬間も鳴いているはずの虫の
声を聞こえなくしてしまう。


「先にヤキを探しましょう。ヤキは食べ物を探して集団で移動するから、出会える確率が
低いんですよ。」そう言ってガイドは歩を速めた。記者も足を速める。ガイドはしばらく
してから立ち止まった。そこはさっき歩き出した場所のすぐそばだ。
「ああ、残念でした。ヤキはもう行ってしまったようです。」

ヤキの鳴き声は大きく、そして体臭も強い。声が聞こえたり、風が体臭を運んでくると、
ガイドはその方向へ客を案内してくれる。そうでなくとも、ガイドたちはヤキの所在情報
を連絡し合うことが多い。情報が入ると、まだヤキに接していない客をガイドはそこへ案
内してくれる。

情報を得たガイドは、記者を案内して海岸に向かって下り始めた。海岸に近い森の中で、
十数匹の黒いサルが地面や木の幹にとまっている虫を捕まえて口に入れている姿がそこに
あった。鳴き声を発し、あるいは高く叫んで、食べながらたがいにふざけあったり、食べ
物を取った者からそれを奪おうとして追いかけている者もいる。[ 続く ]