「インドネシアのゴミ」(2017年09月22日)

海洋プラスチック汚染の元凶は中国であり、次にインドネシアだ、と名指されたこの国で
更に細かい調査が行われ、重金属とプラスチックの激しい汚染地区がそれぞれ確定してい
る。重金属は産業廃棄物、プラスチックは家庭ごみとそれぞれ出自は異なるものの、いず
れもが河川を経由して海に流れ込んでいるのは周知の事実だ。重金属汚染はジャカルタ湾、
スマラン湾、タンジュンブノアなどで顕著に見られる。ジャカルタ湾に流れ込む河川は数
多く、そのいくつかの河口では基準値を大幅に超える汚染が報告されている。北ジャカル
タ市のムアラカマルがその筆頭だそうだ。

一方、マイクロプラスチック汚染については、チラチャップ湾で2.5mg/立米という
濃度が報告された。そのマジョリティが、劣化があまり進行していない状態にあることか
ら、それらは海中に入ってからまだあまり年月が経過しておらず、つまりは波に乗ってそ
こまで流れてきたものでなく、地元民が投棄したゴミであることが推察されている。普通
のプラスチックゴミがチラチャップ湾にも豊富に見られることがその事実を証明している
ようだ。


ゴミ捨て問題は単に住民の意識と啓蒙に関わっているだけではない。たとえば北ジャカル
タ市チリンチンで住民グループがゴミ回収の援助を地元行政府に求めた。ところが道路イ
ンフラがその目的に対して適切さを欠いていた。逆に言うなら、都市計画の及ばなかった
地区に多数の民家が建て込んでしまった結果、四輪車の通れる道路が設けられなかったと
いうファクターが存在しており、当然スラム問題がそこにからんでいる。ゴミだけでなく、
火災が起こっても消防車のホースを接近させることのできない場所がジャカルタには多数
存在しているのである。

ゴミ収集車が入って行けない場所にゴミをためれば、居住者の生活環境はますます悪化す
るだけだ。結局住民はゴミの海中投棄を継続せざるを得ないことになった。啓蒙されて意
識を持っても、それだけで終わる問題ではないのである。


インドネシアの全国で家庭ゴミの回収と処理のシステムがもっとも進んでいるのはジャカ
ルタだろう。そのジャカルタでさえ、そんなありさまだ。ジャカルタ住民が毎日排出する
1万1千トンのゴミのうち2千トンは回収されないまま、最終的に海に流れ込んでいると
言われている。全国各地の地方自治体はたいていゴミの不法投棄を禁止して罰金を科す規
則を設けているが、取締りが行われて違反者が罰金を科されたというニュースを聞くこと
はほとんどない。看板だけ見て世の中がそうなっていると思うのは、特殊な国のひとだけ
だろう。

住民を啓蒙し、意識を持たせることは重要であり、そのために取締りを行って単なる知識
にとどめることなく日常生活での実践を強いるようにしていかなければならないのだが、
ゼロトレランスを実現させるためにはひと回り大きな枠組みの中での対策を行わなければ
ならないにちがいない。
コンパス紙R&Dの調査によれば、生活ゴミの内容は次のようになっている。

1.ゴミの出自別分類
家庭48%、在来パサル24%、商業地区9%、道路7.5%、オフィス6%、学校4%、
その他1.5%

2.ゴミの種類別
オーガニック60%、プラスチック14%、紙9%、ゴム5.5%、金属4.3%、布・
繊維類3.5%、ガラス1.7%、その他2%