「再び、ジャカルタ沈没(前)」(2017年09月26日)

ジャカルタの地盤沈降は慢性的な問題になっている。国民住宅公共事業省水資源調査開発
センターの調査は、地下水汲み上げが現状のまま推移すれば2100年にはジャカルタの
土地は平均して2メートル下降しているだろう、と予測している。下降がもっとも激しい
と予想されているのは北ジャカルタ市アンチョルのトンコル通りと西ジャカルタ市チュン
カレン地区だそうだ。

都庁水管理局データによれば、2006年の都内の井戸数は穿孔井戸が2千3百カ所、掘
削井戸が1千5百カ所あったが、2014年には穿孔井戸2千5百カ所、掘削井戸1千8
百カ所に増加している。2013年の地下水汲み上げ総量は720万立米で、2014年
は880万立米だったが、2016年には2千2百万立米に達したとのこと。

実態は都庁に届け出て許可を得ている井戸よりも無許可で住民が掘っている井戸が圧倒的
に多く、その無統制部分がジャカルタの地盤沈降の最大要因と見られている。鉱エネ省地
学庁データでは、ジャカルタの地盤沈降は1982〜1991年が平均年間1〜9センチ
だったが、2006〜2007年の平均値は1〜12センチとのことだ。その最大の原因
を作っているのが住民の地下水汲み上げであり、家庭ばかりか工場から商業施設に至るま
で、競って地下水を汲み上げている。


都市という、多数の人間が集まって生活している場では、水が生存の鍵を握っている。生
存基盤を満たすためばかりか、人間が行っている諸活動にも水需要が存在している。供給
がそれらの需要を満たしきれなければ、都市の発展は大きなリスクにさらされるだろう。

ジャカルタの地表水はもはや人間の健全な暮らしに不適切なクオリティに劣化しており、
残されているのは上水道と地下水しかない。ところが上水道の供給能力は需要の35%し
か満たすことができない。必然的に、地下水で不足分を埋める方向に社会が動いていくの
である。

都庁水管理局が把握している地下水利用者と汲み上げ状況は次のようになっている。これ
は2016年7月のデータだ。
大規模工場 293事業所 40.1立米
小規模工場 114事業所 30.3立米
大規模商業施設 1,703事業所 294.3立米
小規模商業施設 275事業所 53.97立米
非商業施設 281事業所 187.4立米


天然水保存館は2015年12月に帯水層の水質検査を行った。85カ所で採取された無
圧アクイファーのうちで利用可能レベルの水質を持っていたのは16カ所しかなく、加圧
アクイファーは69カ所のうち12カ所しかそのまま利用できるものがなかった。

チュンカレン、カマルムアラ、プンジャリガン、アンチョル、チャクンで得た分析サンプ
ルは過剰な塩分を含んでいた。それが地下水汲み上げによって海水浸透が誘導されている
結果であることは疑いがない。[ 続く ]