「マンハント」(2017年09月28日)

ジャカルタの電子タバコ販売店チェーン「ルマトゥアファーペー(vapeのインドネシア語
読みはファーペーとなる。日本の殺虫剤メーカーもそう呼ばれている)ショップ」の中央
ジャカルタ市ブンドゥガンヒリル店で2017年7月のある日、価格160万ルピアのフ
ァーペーがひとつ無くなっていることに店のオーナーが気付いた。最後にやってきた客は
アビという名の20歳の若者だ。だが、アビがどこに住んでいるのかわからず、コンタク
トする方法がない。

そして、アビが店にくるときに乗ったオジェッのオートバイをかれが盗んだという話が伝
わって来た。そのいずれも証拠など何一つないというのに、店主と店員の頭の中にはアビ
が泥棒常習犯であるという推測が事実としてこびりついた。

店主と店員たちは相談して決めた。「こんなことを警察に届け出る必要はない。われわれ
があの泥棒野郎にヤキを入れてやればいいんだ。内輪で片付けようじゃねえか。」
インスタグラムのこの店のアカウントに書き込みが載った。
「マンハント:アビを連れてくるか、あるいは居所を店に教えてくれた人に5百万ルピア
進呈」
「アビに告げる。すぐに店に来て、謝罪し、決着をつけろ。」
しかし、それに対する反応はなかったようだ。


8月28日、アビの居所が判明した。店主と店員やその仲間たち7人がアビを捕まえにカ
レッ地区へ向かった。そしてアビを捕まえて中央ジャカルタ市プンジュルニハン通りの店
へ拉致した。

「盗んでない」「オレは泥棒じゃない」と言い張るアビに、激昂した7人が正義の強さを
示しはじめた。悪人は成敗されなければならないのだ。

素手の者もいれば、鉄パイプを手にした者もいた。文明的な喧嘩や仕置きの作法はまだイ
ンドネシアに確立されてない。インドネシア人にとっての生命の軽さがそこに示されてい
る。


翌朝、プンジュルニハン通りに動けなくなって横たわっているアビを家族が迎えに来て、
病院に運んだ。だがひどい脳内出血のために、9月3日にアビは死亡した。

アビが病院で生死の境をさまよっているとき、ワッツアップにアビがリンチされているビ
デオと写真がアップされた。アビの家族は即座にそれをセーブすると、警察に事件を届け
出た。そして最終的にこの事件は単なるリンチ暴力事件から殺人事件へとランクアップし
たのである。警察は店主と店員5人を逮捕して取り調べており、もうふたりは逃走してい
るため、手配がかけられている。