「ドリ白身魚はアブナイ」(2017年10月16日)

今から十数年くらい前から、ドリ(Dori)と表示された白身魚のフィレ肉がスーパーマーケ
ットで目に付くようになっていた。ドリという魚が何なのか、店員に尋ねても明確に返事
する者がいない。だからたくさんの消費者が、それをこれまでインドネシアに紹介されて
いなかった新らしい海産魚だと勝手に想像するようになった。これまでインドネシア人が
知らなかったものなのだから、輸入されたものに決まっている。インドネシアの基本的な
海産物輸入方針は、国内で獲れるものや自国の漁民が収穫してくる種類のものには基本的
に輸入許可を下ろさないという方式になっている。

インドネシアではパティン(Patin)という淡水魚が獲れる。この魚はナマズの仲間で、学
名をPangasius Sp.という。パティンの肉は白身でコクのある味をしており、おいしい。
ドリと書かれた魚肉フィレの正体がこのパティンだったのである。何年にもわたってスー
パーやハイパーマーケットで販売されていたドリは、違法輸入品であることが判明した。
海洋漁業省がパティンの輸入許可を出すことはありえないが、ドリの輸入許可さえ出した
ことは一度もないと表明しているので、名前をごまかして輸入するどころか、輸入者は堂
々と(?)密輸入を行っていたということだ。輸入先はベトナムだった。

水産品加工業界のひとりによれば、それはベトナムの輸出戦略であり、その方法で欧米諸
国への輸出が目覚ましい増加を示しているそうだ。

欧米への輸出品が同じようにされているのかどうかわからないが、インドネシアに入って
いるものにはおまけがついていた。悪質なことに、その白身肉には漂白剤としてトリポリ
リン酸ナトリウムが使われていたのである。ドリのフィレ肉から検出されたトリポリリン
酸ナトリウムは7423から8251ppmで、定められている許容限度の2000pp
mを大幅に超えるレベルになっていた。


ホテルや高級レストランではドリ肉が愛用され、モールの食堂街などでフィッシュアンド
チップスを注文するとたいてい魚のフライの中身はドリ肉が使われている。ドリの白身の
テクスチャーが魅力的であり、また価格も廉いために、料理を高額で販売できるところは
高い利益率を享受することが可能だった。小売りレベルでドリはkg当たり6〜7千ルピ
アだが、国産パティン肉はキロ1万5千前後するのだ。ましてや国産パティン肉は見た目
がドリほど魅力的でないという要素もある。だがドリのその魅力的な見えがかりが人体に
有害な化学物質のおかげであることが、消費者にやりきれない思いを抱かせることになる。

海洋漁業省漁獲製品品質監督海産物検疫庁と国家警察犯罪捜査庁が2017年4月26〜
28日にジャボデタベッとスマランのモダン小売店を対象に行った一斉手入れで532キ
ロのドリ肉が押収された。それに関連して小売業界は、流通業者が卸してくる商品が違法
輸入品か合法輸入品かを見分ける手段がまったくないことに不満を表明している。