「浮浪者外国人がアグネス・モニカの夫だと?」(2017年10月24日)

2017年10月18日午前10時ごろ、首都警察本部表ゲート通用門の警備詰所前にバ
ッグが二つ置かれているのが見つかった。すわ、またテロリストの警察襲撃かと誰しもが
思う。爆発物処理班グガナチームにバッグのチェックが要請された。

チェックを終えた担当員は、中身は衣服・礼拝用品・ライター・腕輪・タバコ・鍵・指輪
が数個だけで、爆発物や危険物は見つからなかったと報告した。さっそくそのバッグを置
いた者の捜査が始まる。


インドネシアの都市では、人の集まってくる場所に必ずカキリマ商人がいて物を売ってい
るのが普通だ。どこへ行こうが例外はないと言って過言ではない。首都警察本部もそうい
う場所だから、目撃者探しには苦労しない。聞き込みを行った結果、警察本部と道路をは
さんで向こう側にあるスマンギプラザを結ぶ歩道橋の上にいた若い男が怪しいとにらんだ
捜査員がかれを連行して取り調べたところ、捜査員の勘が的中したことが明らかになった。

その青年はマレーシア人のモハマッ・ハイルルアヌアル・ビン・スライマンと名乗り、マ
レーシア政府発行のアイデンティティカードを示した。バッグを首都警察本部の警備詰所
前に置いたのは、カキリマ商人にそれを預けようとしたら断られたためだったそうだ。し
かしそんな預け方もないだろう。

警察の取調べは、外国人がジャカルタへやってきて一体何をしているのかという質問に移
行する。すると青年は「妻を探しに来た。」と答えた。
「奥さんの名前は?」
「アグネス・モニカ。」
鳩が豆鉄砲をくらったような取調官の顔が目に浮かぶ。

「アグネス・モニカがオレの妻で、最初ジョグジャへ探しに行き、それからジャカルタに
探しにきた。妻は西ジャカルタに住んでいる。」という青年のさえずりに、こいつは頭が
おかしいのか、と取調官は思ったようだ。しかしそれは青年のユーモアだったらしい。話
し込んでいくうちに、父親の友人を頼ってジャカルタに来たことが明らかになった。


青年は2017年10月11日にバタムに入国し、ジャカルタへ来てからは金を使い果た
したので、浮浪者の暮らしをし、知り合ったプガメンに助けてもらってプガメン稼ぎをし
て食いつないでいたそうだ。バッグを持っていたら稼ぎの邪魔になるから、誰かに預けて
・・・ということだったらしい。

首都警察は法的措置を何も取らないことにし、イミグレーションに連絡してこの青年を強
制送還させることにした。イミグレーションはマレーシア大使館と連絡を取って、この青
年の強制送還措置を執行した。

インドネシアで廉く暮らしたい外国人は、かれのようにすればその希望が実現するにちが
いないだろう。