「プリブミ宗教国家(2)」(2017年10月27日)

現職のバスキ候補に対して、デモクラッ党・PPP党・PAN党・PKB党が推す前ユド
ヨノ大統領の子息とグリンドラ党+PKS党が出馬させた前教育文化大臣アニス・バスウ
ェダンの三つ巴から、結局緒戦で落ちたユドヨノ候補の支持陣営がプラボウォ・スビヤン
ト氏率いるグリンドラ党に合流して宗教を前面に押し立てた反バスキ戦略に全力を傾け、
その流れで現職候補を降す結末へと行き着いた。ちなみにバスキ候補を支持したのはPD
I−P党・ナスデム党・ハヌラ党・ゴルカル党だ。そこに現国政における主流と反主流の
色分けが滲み出てくることにお気づきの読者も多いにちがいない。


この都知事選は疑いもなく、2019年の大統領選に向けての前哨戦という位置付けを持
たされた。ユドヨノ前大統領の子息を都知事に据え、次のステップで大統領にという構想
は失敗したものの、その一方で現職ジョコ・ウィドド大統領の二選を覆そうとする宿敵プ
ラボウォ・スビヤント氏が、この都知事選で築いた支持集団をそのまま引き連れて次の大
統領選に臨もうとする企図は十二分に読み取れる。

そうするためには、今のNKRIという国体とその基盤をなすコンセプトに承服していな
いかれの支持集団へのメッセージとして、選挙戦以来培われてきた文化に浸っているかれ
らに向けて新都知事がリップサービスを唱えることは有意義であるにちがいない。そのよ
うな形で新都知事が支持階層への謝意を表明し、今後の政策の色付けがどのような方向を
向くのかということをかれらに実感させるのは有効な政治的配慮になる。

現政権が主張している「流した汗の量に見合う報酬」というロジックを「汗を流さずに最
大限の報酬を」というロジックに入れ替えてジャカルタでそれを実践させたなら、これほ
ど強力なジョコウィ落とし戦略は他になかなか見つからないにちがいない。ただし、その
ようにして大統領が替わったあと、そんな政策が国家レベルで継続されるかどうかはまた
別の話なのだが。


いま予想される2019年の大統領選は、かつてなかった国体とその基本コンセプトを問
う正念場になる可能性が高い。NKRI、ビンネカトゥンガルイカ、パンチャシラなどの
国家基盤コンセプトとイスラム教国家建設というふたつの対立概念が共和国成立後74年
経過してやっと、国民の意思を問う舞台に乗ることになるだろう。不安をもたらすのは、
イスラム教国家建設というコンセプトをほとんどのテロリストやイスラム過激派が信奉し
ていることであり、当然ながらかれらは一方の陣営に組み込まれて、硬軟織り交ぜた戦術
のハンマーに使われることが起こるかもしれない。[ 続く ]