「プリブミ宗教国家(3)」(2017年10月30日)

さて、いま国内で議論の的になっている「プリブミ」なる単語について、触れておこう。
KBBIによれば、pribumiの語義は(1)penghuni asli、(2)yang berasal dari tempat 
yang bersangkutan、(3)inlanderとなっている。

インドネシア語やジャワ語の綴りはpribumiだが、マレーシアではperibumiと綴られるこ
ともある。同義語としてbumiputeraやanak negeriという言葉も用いられる。bumiputera
はサンスクリット語で、bumiは「土地」、puteraは「子」を意味し、サンスクリット語順
になっているためbumiがputeraに掛かって行って「土地の子」となる。それがムラユ語に
訳されてanak negeriとなった。

pribumiについては、元々penduduk peribumiだったものが単にpribumiという言葉に縮め
られたと推測することができる。インドネシア語のperiにはhal, sifat, keadaanの意味
があり、perihal, perikemanusiaan, peribahasa, perilaku, perinatalなどにその用例
を見ることができる。

もうひとつ考えられるのは集合体を表すparaの可能性で、paraは往々にしてpraに変化し、
praは更にpriに変化することがあるため、penduduk para bumiということだったのかもし
れない。

オランダ語のinlanderはinlandに生息する者を意味しており、inlandは英語と同じで内陸
部や奥地を指していた。オランダ人がプリブミをインランダーと呼んだのは、文明的に遅
れた人種である奥地人という意図を含んでそう呼んだのであり、要するに蔑称だった。プ
リブミというインドネシア語はインランダーの訳語として出現したらしい。20世紀前半
のオランダ領東インド諸都市が活発なヨーロッパ文明化の波を浴びた時代に、あちこちに
白人専用の施設が設けられ、「インランダーと犬は立入禁止」という表示が掲げられた。
インランダーは犬並みだとされたのである。


インドネシアを植民地にしていたころのオランダ人はたいへんなレーシストだった。人種
文化面に及ぶカースト制度を敷き、社会秩序の中で各階層がどう扱われるかということを
法制化したのである。オランダ植民地政庁は1854年に植民地法の中で政令第109条
に、オランダ領東インド住民を三つの階層に区分した。政治的に第一級の住民をヨーロッ
パ人あるいは白人とし、第二級は東洋異人(Timur Asing)、そして最下層の第三級住民を
インランダーと定めた。東洋異人とは華人系・アラブ系・インド系などヌサンタラに渡来
してきた異民族とその子孫たちであり、子孫たちはほとんどが土着民との混血者だったは
ずだが、本人の自己アイデンティティに関する精神性は無視されて外見的な特徴や血統に
従う区別が優先された。徹底的な分割統治精神だ。そのコンセプトが土着民の中にしみ込
んだ結果、土着民にレーシズムに向かう傾向を培わせることになってしまったようだ。

言うまでもなくその観念は、VOCが永年にわたって統治を進めてきたヌサンタラの諸地
域で行われていたものの延長線上にある。VOCの時代は奴隷制度の時代であり、地元民
の土地の支配権を握った異民族が支配秩序を確立させるためにコミュニティに加えるべき
土着民を区別して差別した。

VOC職員や嘱託として派遣されてきたヨーロッパ系白人が支配階層を形成し、市民権が
与えられない奴隷階層と、たとえかつて奴隷だったとしてもその拘束期間を終えたりオー
ナーが自由人にしたかれらを含む一般自由市民階層という区分がなされ、そして同時に非
白人の中をも土着民族と異邦人(Vreemdelingen)という名の非土着民族に分割された。
[ 続く ]