「パンチャシラと人格教育」(2017年11月03日)

現ジョコウィ大統領政権は国民の人格教育をテーマのひとつに採択して教育制度の中には
め込んでいる。中でも、インドネシアを宗教国家に変えようとしている勢力に対抗し、そ
の企みを瓦解させるためには、一体化した多様性の国是を踏まえたパンチャシラを国民の
国家観の基盤に置き、それを確固たる柱にして国民ひとりひとりに手掛かりを与えること
が重要だという観点に立脚した姿勢が取られており、そういう方向性を持たせた人格教育
がインドネシアで推進されているということなのである。人格教育という言葉から受ける
印象よりもはるかに政治的意味合いの濃いものであるため、われわれはその点を誤解しな
いようにしなければならないにちがいない。

独立後70年を経過した今、国民の世代交代は累を重ねてきた。若い人々が正しくその内
容を理解できるように、時代に即したパンチャシラの姿を現代国民に示すのはたいへん重
要なことであるにちがいない。政府は教育界に対し、国民教育の中で指導されるパンチャ
シラの各項目の意義を次のように補足している。

(1)Ketuhanan Yang Maha Esa (一神教型の有神性)
   宗教性 = 信仰、善行、寛容さ、環境への愛

(2)Kemanusiaan Yang Adil dan Beradab (公正で文明的な人道主義)
   自立 = 勤勉さ、創造性、規律、勇気、学習

(3)Persatuan Indonesia (インドネシアの一体性)
   愛国性 = 祖国愛、民族精神、多様性の尊重

(4)Kerakyatan Yang Dipimpin oleh Hikmat Kebijaksanaan, Dalam Permusyawaratan 
   / Perwakilan (英知に導かれる合議制と代議制方式の人民主権)
   誠実さ = 正直さ、率先垂範、謙遜や慎み、真理への傾倒

(5)Keadilan Sosial bagi seluruh Rakyat Indonesia (全インドネシア国民に対す
   る社会的公正)
   ゴトンロヨン = 合作、連帯、相互扶助、家族的一体感

その実践形態の例として、教育現場ではつぎのようなことがらが行われている。
1.「安全な学校」運動
2.ボーイ/ガール・スカウト運動、青少年赤十字、宗教学習活動、自然愛好活動、スポ
ーツ、その他
3.全国科学オリンピック、全国生徒スポーツオリンピック
4.学内での芸術やリテラシー活動
5.全校生朝礼集会(学校からの連絡、国民必修歌の合唱、各信徒それぞれの方法による
祈り)
6.種々の教育施設を利用して行う教室外学習活動、芸術学習の成果や創造性を示すため
の定期的な発表会
7.正直キャンティン(店番のいない売場で取った品物の支払いを正直に行う)で正直さ
を涵養する
8.異なる宗教系の学校を訪問して、寛容性を高める
9.教室や学校内外のゴトンロヨン清掃
なお寛容性とは、異質な人々を受け入れ、対等な仲間として共存することを意味している。