「ブローラの旅(後)」(2017年11月03日) 地元民がそこに油井を掘って石油を採取していることを知ったオランダ植民地政庁が18 70年にその地で採油を開始し、独立後はプルタミナがその事業を引き継いだ。埋蔵量が 減ったためにプルタミナがそこでの事業を閉鎖した後、地元民が民衆採油事業を復活させ て今日に至っている。採油事業は協同組合と村有事業体および民間資本がプルタミナと組 んで素朴な設備で行っているものがほとんどで、民間資本はポンプジャックを使っている が、民衆が行っているものは長いパイプの先にバケツが付いたようなものを油井に差し込 み、弁を開くと油が湧き上がってくるという方式の設備が多い。 ルドッ村の採油所見学はプルタミナの許可を得なければならない。 18時: スドゥルールシケップ(Sedulur Sikep)部落、別名サミン(Samin)部落を見学。 ブローラ県サンボン郡サンボンレジョ村ドゥクブリンビンにあるこの部落は住民6百戸。 部落内はとても清潔で整然としている。村道にはコンクリートブロックが敷かれ、、家と 家の間はたっぷり余裕が取られて、建物の並びも揃っている。ヤギ小屋や牛小屋から不快 な悪臭は漂ってこない。 ここでは、バティックの学習ができる。黒色の下地に動物や植物の姿から採られた素朴な モチーフのデザインが明るい色で描かれる独特のものだ。ローカルの知恵を学びつつ地元 のひとびとと共同生活をするのが、この部落の魅力になっている。スドゥルールシケップ 親睦コミュニティの会長が、ローカルの知恵にもとづいてあらゆる鋭い質問に答えてくれ る。 20時: ブローラ市内シンドロ通りのサテ屋「Pak Daman」を訪れる。メニューはサテ アヤムとサテサピ。ここでオリジナルのサテブローラを堪能できるそうだ。 パッダマンは26年前に開業し、6年前から娘さんの代に替わった。この店は一皿いくら でなく、食べた串が何本かで代金を払う仕組みになっている。客の正直さが試されている。 翌朝10時: トダナン(Todanan)郡クドゥンウグ(Kedungwungu)村のプルフタニチーク林 の中にある洞窟ゴアトラワン(Goa Terawang)を探訪する。その名が示すように、日光がカ ルスト洞窟の天井にある穴から差し込んでいる。洞窟内見学に絶好の時間帯は午前9〜1 0時と夕方の15〜16時だ。数百年にも渡って自然が作り出した石灰岩の洞穴は6つの 部屋に分かれ、一番奥は突き当たりになっている。ここは写真家たちのお気に入りの場所 なのである。しかし洞窟の中はまだ自然のままであり、観光施設としてはまだまだ整えら れていない。洞窟内の通路は水をかぶっていて、滑りやすい。 13Haの広さを持つ石灰岩の丘にある洞窟群の周囲はチーク樹に取り巻かれ、中には樹 齢102歳という老木もある。幹は大人四人が抱きかかえるほどの巨大さだ。 12時: ブローラが生んだ世界的文学者プラムディア・アナンタ・トゥル氏の図書館が 市内スンバワ(Sumbawa)通り40番地にある。これは非営利図書館で、プラムディアとふ たりの弟たちが企画して設けたものだ。オープンは2006年で、そのときプラム氏は既 に故人になっていた。中の蔵書は三兄弟のものがメインをなし、パタバ(PATABA)と呼ばれ るこの図書館は読書や著述や討論会などに使われている。パタバとはPramoedya Ananta Toer Anak semua BAngsa の大文字部分が集められたものと思われる。 今この家に住んでいる末弟のスシロ・トゥル氏は、「81歳で亡くなった長兄のプラムよ り長生きしたいね」と語っていた。 13時15分: 市内シンドロ通りにあるソトクレトゥッ「パッガロ(Pak Galo)」で昼食 だ。ソトクレトゥッとはソトアヤムに揚げキャッサバを振りかけたもので、食べるとクレ トゥッ〜クレトゥッと音がするところから名付けられたそうだ。このアヤムカンプンを使 ったソトブローラもなかなかのもの。 二日間、素朴な食事を楽しんだ記者は、こうしてジャカルタへの帰途に就いたのである。 [ 完 ]